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米国MIT留学報告(植田 麻記子)

SNSの人間関係が現実社会を構築へ  (2012.5.21)

前回はアンチfacebookを掲げたUNTHINKを取り上げました。今回は、UNTHINKにfacebookとともに標的にもされたGoogle+に着目したいと思います。Googleは2011年6月にサービスを開始したGoogle+のユーザー数がこの1月の末に9000万人を超えたと公表しました。言語も日本語を含む8言語に対応しており、とりわけアカウントになるgamilの利用者数の多さを鑑みれば、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)において、facebookに次ぐ選択肢になる可能性を十分に感じます。

私も利用していますが、仕様は基本的にfacebookと同じです。UNTHINKでも指摘されたfacebookでは当初、重視されていなかった帰属社会における個人の重層的アイデンティティに配慮し、友人、家族、知人、パブリックに分けて、あるいはそれらを組み合わせて、情報を発信することができます。Google傘下のYou Tubeからの動画投稿のスムーズさも魅力的です。


カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogle米本社前

しかし、おそらく最大の強みはTwitter(ミニブログ)の機能を合わせ持っている点です。そもそも、facebookは双方が友人と認知する人間関係性を前提としていました。その点Twitterでは、政治家、芸能人、言論人、運動家など著名人の発言をフォローすること で、面識はないものの、関心を引く人物と関係性を築くことができる点が画期的でした。そして、著名人が、返信やリツート機能によりフォロワーと双方向の関係性を築くケースもあり、インターネット上で、見知らぬ人間同士が築くネットワークを生み出すプログラムを提供しました。それが先のエジプトでの革命に与えた影響の大きさが指摘されたのは周知の通りです。

Google+にはフォローの機能があり、Twitterと同様に、著名人や直接面識のない人物のページをフォローすることで、彼らから発信される情報を受け取り、コメントや共有機能によって、インターネット上である程度双方向性のある関係性を築くことが可能です。

とりわけ、サークルの機能では、共通の話題による人的ネットワークを築くことができます。例えば、政治に関心のあるユーザーは「政治」のサークルを作り、関連する人物を登録し、このサークルに加えた人物に限定的に、政治的意見を発信することもできます。とりわけ関心を引く政治家などの人物については、フォローすることで彼らの情報をリアルタイムで受け取ることができます。例えば、このユーザーが自転車にも関心があった場合、別に作った「自転車」のサークルでは、全く色合いの異なる、例えば、週末のツーリングなどについて、同じように自転車に関心を持つ人たちと情報を交換することができます。

しかし、SNSは人と繋がっていてこそ機能するサービスのため、既存の人間関係の大部分がfacebookに取り込まれている現状では、大々的なユーザーの乗り換えが起こらない限り、サービスの内容以前に、Google+を利用するメリットは限られます。

実際、facebookにも購読の機能が加えられ、現在ではfacebookでも著名人や面識のない人物のページをフォローすることができるようになりました。facebookは、公開範囲設定や友人の分類設定に改変を加え、コンタクトを家族、近しい友人、同窓生などに分類し、応じて情報を公開できるようになっています。言わば、facebookも人間関係の距離感に幅を持たせることを許容するサービスを提供し始めたわけです。本来それは、いかなるネットワークにおいても個人が単一のアイデンティティを提示することでよりより社会が形成されるというfacebookの本来のポリシーには相反しますが、SNSの基盤がいかに人々を組み込むかにかかっている点をよく理解した対応であると考えられます。

Google+の参入に、さらに加熱するSNSの競争は、少なくともインターネット上に築かれる人的ネットワークが実在的な社会として、厳然と展開していることを可視化しています。それは、関係性の距離感の多様性を含め、複雑化しながら、従来の人間関係の在り方と基本的には近いものになりつつあります。一方で、著名人のSNSの利用に顕著なように、現実の距離を劇的に短縮させた点、言いかえれば、本来接点の持ちようのなかった人と人を繋げた点において、新しい展開をみせました。社会的リーダーが、このインターネット上の社会で、SNSのツールをいかに活用し、どのようなネットワークを築くかが注目されるのは、その所以であると考えられます。

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