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米国MIT留学報告(植田 麻記子)

「夏休み」が秋入学制度を決める  (2012.8.31)

5月の卒業式シー ズンを終えると、アメリカの大学は、いよいよ「夏休み」に入ります。基本的に秋学期は9月に始まるので、夏休みは6・7・8月にわたる長期の休暇になります。し かし、この夏休みは、実は学生にとって非常に重要な三ヶ月になります。

現在、日本では、世界の7割の大学が秋入学制度を採る中、春入学制度によるズレが優秀な留学生、研究者の派遣、受け入れを阻害しているとして、国際化の観点から、秋入学制導入について議論が活発に行われています。しかし、しばしば指摘されるように、入学時期をめぐるこの議論は、日本の高等教育のあり方をめぐる根本的な議論へ展開せざるを得ません。

そうした中、実は、春学期と秋学期に挟まれた「夏休み」をどのように考えるかは、日本の高等教育における国際化、そしてその質や、就職活動との関係など、そのあり方を検討する上でも鍵になりそうです。そのような 観点から、今回はアメリカの大学の「夏休み」について、取り上げたいと思います。秋学期制の導入の是非の議論は、今回の紙面には余るため、取り上げませんが、米国の学生たちの「夏休み」の過し方から、日米の高等教育について、とりわけ「国際化」と「就職活動」の切り口から、考えてみたいと思います。

その上で、高等教育という分野において浅学な私の雑感ではありますが、先ず、必ずしも米国の制度が日本の制度に比べて無条件で優れているとは言えず、実は日米ともに高等教育における問題点はある程度、共通しているのではないか、そして、その解決法は、それぞれの社会的背景も踏まえ、その性質を理解したうえで、漸進的に模索される必要があるのではないか、と考えます。

三ヶ月の「夏休み」ですが、少なからずの学生にとって、実際の夏休みは5月中旬から6月の中旬の一ヶ月程度です。この間に、多くの学生が家族の元に戻ります。そして、6月中旬以降には、実際には様々な「プログラム」が始まります。

6月中旬には、サマースクール、あるいはサマー・プログラム(夏学期)が始まります。サマースクールは、在校生以外、また諸外国からも入学者を募ります。関心のあるプログラムがあれば、他校のサマースクールに応募することもできます。また、現在、イーラーニング、つまりインターネットを活用した通信教育の発展に伴い、遠距離から、科目単位で参加することができる設置科目も増えてきていきます。つまり、日本から、米国のサマースクールを受講することも可能です。そのようなことから、サマースクールの入学者は、世界各国から集まり、働きながら参加する人も少なくありません。一種の生涯学習、高等教育の開放と社会貢献(アウトリーチ)の要素も併せ持っています。昨今、意識が高まっているように、補助金を得た研究活動において、学知の社会への還元は義務でもあります。

サマープログラム(夏学期)では、秋・春学期と同様に単位が認定されます。いわば、もう一学期あると捉える ことができます。単位が認められるという意味では、日本の大学で行われている、夏休み中の集中講義とほぼ同じです。ここで、重要な点は、この夏学期において、通常の学期とは異なる、多彩なコースが設置されることです。他校の教員が担当するコースや、いわゆるフィールド・トリップのコースなど様々です。日本の夏の集中講義でも、諸外国から教員を招いて行われることがよくありますが、教員が、本務校以外の大学で、夏学期のコースを担当することで、教育における学術交流の一環にもなっています。

確かに、米国では日本に比べ、サマースクールや夏学期が大学の事業として総合的且つ横断的にデザインされているといえますが、基本的には日本の大学で行われている生涯学習コース、通信教育プログラム、スクーリング、集中講義と共通したものだと思います。

また、夏休み中はインターンシップもとても重要です。短期的に企業や研究所に入り、研修を受けることができます。インターンの経験は、その後の就職活動において非常に重要になってきます。一般的に、日本の高等教育の欠点として、就職活動の開始時期が早く、学生が勉学に時間を割けないことが指摘されますが、インターンシップを始め、広く就職活動にかかわる活動は米国でも一年後、二年後の就職を見据えて、二年生、三年生のうちに行われています。日本では、アルバイトとインターンシップの境界線がある意味であいまいで、学期中のインターンシップが少なくありませんが、米国の場合、ほどんどのインターンシップが無給であり、夏休みに集中的に行われます。確かにこの点において、学期中、学生は勉学に集中することができるといえるかもしれませんが、通常、米国の学生も学期中にアルバイトをしています。

一方で、ホワイトハウスでの実習生が、一つのステイタスとして認知されているように、分野によっては、どこでインターンシップを行ったかで、一年後、二年後の実際の就職が左右されるという事情も同じです。インターンシップ採用選考が、実質的に就職活動における第一次選考になっていることも少なくありません。インターンシップ経験がない場合、基本的に大手企業、公務員への就職は難しい点で、日本よりもむしろ厳しいといえます。また、インターンの採用にあたり、複数の推薦者を必須とすることも少なくなく、その際には、学生の親族に有力者がいるかいないかなどが、審査に影響することもあり、機会の平等という点において問題が指摘されます。また、無給を良いことに、インターンシップ制度を悪用した学生の「タダ働き」の問題も日本以上に深刻です。米国の大学生のインターンシップ事情から透けて見えるのは、日本同様に早くからかかる学生への就職活動のプレッシャーと、日本以上に過酷な就職における機会格差です。

インターンシップの交渉は、個人で行うケースもありますが、学校を通じて行うこともあります。例えば、MITのMISTIは、各国地域ごとのセクションがあり、学生を諸外国の企業や研究機関にインターシップとして派遣する事業を行っています。MISTIは、学生と諸外国の派遣先企業、研究機関の間に入って、様々な調整を行います。学生の希望を聞きながら、派遣先と交渉をします。大学院に進学する学生も、インターンをするとこが少なくありません。その場合、自身の研究関心から、志望のインターン先を検討し、大学に交渉を依頼することができます。

ここで、就職活動ではなく研究活動の一環としてのインターンシップについても、触れておきたいと思います。夏休み中のインターンシップは、学部生だけのものではありません。大学院生も、長期の休みを利用して、諸外国の研究機関でインターンシップを行います。政治学の学生も、例えば自分が研究している国・地域への調査を兼ねた、関連地域の大学、研究機関でのインター ンシップを行い、そうした活動をサポートする様々なプログラムが大学で組まれます。

MISITについて、もう少し紹介したいと思います。MISTIはインターンシップ事業だけでなく、MITの第二外国語教育のプログラム、その地域に関係するあらゆる学科の教員・学生を巻き込んだ事業を横断的に運営しています。そこには、短期の語学研修・留学プログラムや、大学院生を対象とした外国の研究機関でのインターンシップ、フィールドワークの支援、国際交流事業、国際的シンポジウムや学術会議の開催なども含まれます。いわば、大学全体の国際化の要となっています。

例えば、MITは東日本大震災の復興支援事業、MIT・ジャパン・イニシアティブを立ち上げました。宮城大学を始めとする複数の日本の大学との協力体制に加え、MITからも建築学科、政治学科などから、教授が横断的に参加し、指揮を執っています。MISTIの日本セクションは、日本側の行政、大学との交渉、また、同プロジェクトへの学生の派遣などを一手に担当しています。

MISTIによって、学内の学科の垣根を越えた連携を図り、国際的要請を前に、迅速に挑戦的な事業を立ち上げることが可能になっているといえます。

米国の大学では、確かに日本の大学に比べ、国際的な交流を可能にするプログラムが総合的にデザインされているといえるかもしれません。それはサマースクールやサマープログラム(夏学期)、あるいはMISTIなど、諸外国、地域に関連する大学事業を担う機能の充実など、参考になる点も多くあるかもしれません。一方でもちろん、それらの事業が有機的に機能している大学は、米国においても限られます。

一方で、夏休みに活発となるインターンシップの事情からは、日本の高等教育が抱える問題と極めて類似する、あるいは米国特有の課題があることも垣間見られます。米国ではインターンシップ制度が就職活動、研究活動を通じて、確立しています。それゆえに、大学の学生インターンシップ支援のサービスが充実しています。日本ではアルバイトや産学連携事業と、インターンシップの境界が明確ではありません。しかし、実際には米国のインターンシップ制度は、先にも触れたように、 日本同様に学生に早期から就職活動のプレッシャーをかけ、「タダ働き」の問題やコネクションなどを背景とした機会の不均衡の課題もはらんでいます。

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