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サービス・イノベーション研究委員会報告

第7回 サービス・イノベーション研究委員会(平成22年3月19日)

平成22年3月19日午後6時、東京都千代田区の日本記者クラブ大会議室において第7回サービス・イノベーション研究委員会を開催した。今回の委員会では、日産自動車(株)社会・フロンティア研究室の等々力強氏が「テレマティクス・サービスの現状と今後」について、また東海旅客鉄道株式会社総合技術本部技術企画部の古橋智久氏が「東海道新幹線における旅客サービスの向上」について、サービスの視点から紹介した。

■第7回 サービス・イノベーション研究委員会での講演概要

1.テレマティクス・サービスの現状と今後

 日産自動車の等々力強氏から「テレマティクス・サービスの現状と今後」について報告があった。等々力氏は、研究所に所属していることからR&Dサイドから見たサービスについて、特にIT技術、テレマティクスに絞って説明があった。

(1)自動車産業の市場規模

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富士ゼロックスが取り組むサービスビジネスの 現状を説明する武田優グループ長

 自動車産業の市場規模を見ると、新車販売の市場は10〜11兆円程度、整備工場やディーラー等で行う整備関連が5、6兆円程度あり、これらを併せて自動車会社が参加できる市場になっている。
 ガゾリンスタンドやそれ以外にアフターマーケットやサービスと呼ばれるものが、新車販売の4倍の規模であり、我々も自動車新車販売だけにとどまらず、こちら(サービス)の市場に参入する機会をうかがう状況にある。 

(2)CAR WINGS(カーウイングス)という情報提供センター
 − 各種情報を取得し、付加価値をつけて情報提供 −

 こうした中で、ITの進化に伴い、車が外とつながっている状況にある。もちろんモバイル機器ともつながっているし、交通インフラともつながっている。後で紹介するCARWINGS(カーウイングス)という情報提供のセンターを持っている。
 車が外部から提供される色々な情報、例えば、行こうとする先の路面や天気情報などを取得し、その情報を利用しながら走ることができるようになってきている。日産は CARWINGS と呼ばれる情報センター(データセンター)を設置して、メーカー純正のナビをつけていれば情報提供サービスが受けられるような仕組みを用意している。CARWINGS は、インターネット経由で自宅のPCなどと接続したり、地図センターから情報を取得したり、あるいは交通情報センターや他車からの情報を取得し加工したりすることで、付加価値をつけた情報提供ができるようになっている。

(3)自動車産業の市場規模

 自動車産業の市場規模を見ると、新車販売の市場は10〜11兆円程度、整備工場やディーラー等で行う整備関連が5、6兆円程度あり、これらを併せた市場である。
 ガゾリンスタンドやそれ以外にアフターマーケットやサービスと呼ばれるものが、新車販売の4倍の規模、我々も自動車新車販売だけにとどまらず、こちらのサービス市場へ参入する機会をうかがう。 

(4)CAR WINGS(カーウイングス)という情報提供センター
 − 各種情報を取得し、付加価値をつけて情報提供 −

 ITの進化に伴い、車が外とつながっている状況にある。もちろんモバイル機器ともつながっているし、交通インフラともつながっている。後で紹介するCARWINGS(カーウイングス)というセンターを持つ。
 車が外部から提供される色々な情報、例えば、行き先の路面や天気情報などを取得し、その情報を利用しながら走ることができる。日産は CARWINGS と呼ばれる情報センターを設置して、純正のナビをつけていれば情報提供サービスが受けられるような仕組みを用意している。CARWINGS は、インターネット経由で自宅のPCなどと接続したり、地図センターから情報を取得したり、あるいは交通情報センターや他車からの情報を取得し加工することで、付加価値をつけた情報を提供する。

(5)安全へのアプローチ
 − 小さなスリップ情報などを集め、目的地に至る経路の注意喚起が可能なシステムを開発 −

テレマティクス・サービスの安全面に対する利用では、神奈川県、横浜市、メーカーなどのパートナーと協力しながら、ITS (Intelligent Transport System:高度道路交通システム)フィールドテストとして、みなとみらい地区において2007年ごろから「SKYプロジェクト」と呼ばれる実証実験を2つのテーマで取り組んでいる。ひとつは、インフラが車とコミュニケーションを行い、「見えにくい場所での歩行者等の情報」をナビゲーションに表示し、より安全な運転をサポートするシステムである。
 もう一つは、冬場の北国を想定したものだが小さなスリップ情報などを集めることで、目的地に至る経路上の凍結情報など危険箇所の注意喚起が可能なシステムを開発した。これらは、北海道地区やつくば地区、みなとみらい地区などで実証試験を行っており、実施可能である。

(6)環境保護へのアプローチ
 − エコドライブシステムで、コンパクトカーの場合18%の燃費削減の効果がある −

 「みんなでエコドライブを」と言われているが、いかに実施してもらうかということが課題である。エコドライブの基本は、ゆっくり加速して通常走る時にできるだけ低速を維持することだ。テレマティクスを利用して契約ユーザーごとに燃費情報をプロットし、注意をうながすことで燃費を良くすることが可能。
 このサービスは、ナビの画面に瞬間値の燃費が表示され、個人の運転スキルや特徴に併せたアドバイスがあるほか、自宅PCから自分のIDでホームページにアクセスすることで車種ごとにランキングが表示されてゲーム感覚でエコドライブに取り組み、競争をすることもできる。
 実際に、エコドライブシステムを入れる前の運転と比較すると、コンパクトカーの場合18%の燃費削減の効果がある。

(7)スマート社会に向けて

 日産自動車は電気自動車に取り組み、今年からリーフという車を販売する。その際、テレマティクスを利用したサービスを充実させたいと考えている。横浜みなとみらい地区では、「プロジェクトゼロ」という活動を展開し、動き出している。山下公園周辺を完全にゼロカーボン地域にしてしまおうという取り組みをしている。


質問:価格ドットコムは、はじめは価格比較のビジネス、プライシングだけだったが、利用者のクリック情報の蓄積で消費者の動向を把握することにで、新しいコンサルサービスビジネスが生まれている。テレマティクスも同様に、最初は実証実験でデータを集めているだけだが、それが貯まってきた時に、重要な情報が得られる。うまく使うことでビジネス化できるのでは。
回答:それは考えられる。今は位置情報だけの話ではあったが、ドライバーの履歴を全て取れるので、どこで何をしているかが分かるようなになっている。

質問:ITの良さを引き出すために車にも改善改良を加えて、システムに合わせるということもあるのでは。
回答:駐車アシストのために、弊社ですと車周り360度の画像が取れる技術が導入されていて、容易に駐車スポットにいれられる。これを利用すると、そこら中の映像が撮れる。

2.東海道新幹線における旅客サービスの向上

JR東海、総合技術本部技術企画部の古橋智久氏から「東海道新幹線における旅客サービスの向上」について、サービスの視点からの報告があった。


新幹線、航空機と比較してCO2排出量で約10分の1である

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「サービスの市場への参入をうかがう状態にある」と報告 する、日産自動車の等々力強氏。

 自動車産業の市場規模を見ると、新車販売の市場は10〜11兆円程度、整備工場やディーラー等で行う整備関連が5、6兆円程度あり、これらを併せて自動車会社が参加できる市場になっている。

JR東海は、巨大なインフラ会社であり、長期的な視点で色々なサービスを提供してきている。今回の発表は技術開発の面ではなく、サービスの視点を中心に紹介する。

 JR東海の輸送人キロの推移を見ると、GDPの動きに連動して推移している。このうち、新幹線の列車本数と利用状況の推移を見ると、平成4年にのぞみが導入、H14〜15年にはのぞみの利用が大きく増加し、ひかりとの比率が逆転した。
 東海道新幹線の使命は、都市間、主として東京大阪間の輸送を提供することであり、その重要なサービスの課題として安全性や正確さなどが挙げられる。安全面では開業以来45年間死傷者事故ゼロを維持し、また、正確さでは天候等の影響で遅延することがありながら、平成20年度実績で列車当たりの平均遅延時間0.6分(36秒)を維持することができている。輸送人員は1年間に1.5億人を運んでおり、国民一人が1回以上利用していることになる。環境に対しては、航空機と比較してエネルギー消費量が約6分の1、CO2排出量で約10分の1であるなど優れている。


輸送サービスを向上させる

 当社の輸送サービスの向上のフローについて説明する。
 鉄道業においては、運輸、ダイヤなど大きく4つの系統があるが、今回は運輸部門における輸送サービス向上のフローについて紹介する。運輸部門は、顧客に最終的に見える「ダイヤ」という商品に反映させる。顧客のニーズを考慮しながら、速度向上のためには最高速度や加減速度とか、曲線をどのような速度で通過するかなどを決める。
 運輸サービス向上の具体的な取り組みは、課題解決のために技術開発を行い、あるいは世の中にある技術を取り入れて、最終的な商品であるダイヤにどう結び付けるのかなど検討が進められている。鉄道会社のサービスを向上させるための基本フローとなる。


速度向上、輸送力の増強のための課題

 速度向上、輸送力の増強のために様々な課題が出てくる。これらを車両、施設、電力、信号通信のテーマに対して、それぞれ専門の分野で課題解決を行っており、その結果として1時間15本、時速270kmを実現している。個別に報告する。
 速度向上のためには、車両を軽くする課題が出てくる。そのためにアルミ化を計ったり、交流の誘導電動機を採用したり、台車も重要でボレスタレスという台車を導入したり、床をハニカム構造化にしたりといった軽量化への取り組みなどの空力特性の改善を実施している。


品川駅の改良、東海道新幹線第2の開業

 特に、抜本的に輸送力を高める取り組みとして、品川駅を新しく作る構想が出てきた。
 輸送力を向上させようとしても、東京駅と品川駅間にある車輌基地がネックになって、11本までしか走らせることができない。そのため輸送力向上のために品川駅で折り返しを可能にし、東京−品川駅間にある車両基地引きこみ以降で確保できない本数分(例図では15本が11本になっている)の運転を可能にするほか、非常時に品川駅始発を可能にして弾力性が確保でき、さらに東京南西部の拠点の駅、サブターミナル機能によりアクセスを向上させることを可能にした。


●加速性能を向上し、東京、品川、新横浜の3駅に全て停車

 それから加速性能を向上することに取り組んだ。時速270km/hまでに到達するのに、従来のN700系車輌は300秒で、5分掛かるのに、この新しい車輌では3分と加速性能を向上させた。これに合わせてN700系という車輌も加速度を高める改良をして、東京、品川、新横浜という3つの駅すべてに止まることが可能になった。加速性能がちぐはぐであると、ダイヤが組めなかったので、車輌性能の向上は非常に意味あることであった。


●オフィス環境を目指す

 オフィス環境を目指そうということで、モバイル用のコンセントを大幅に増設した。背面テーブルの拡大をはかった。A4サイズが置けるテーブルに改善した。
社内インターネット接続サービスは、列車無線のデジタル化により、開業から45年、業務系の運行に使う無線と同じ仕様のもの、第3世代のものに取り替えるタイミングに合わせて、容量を振り当てて車輌の改良とあわせて実現している。

接客サービスの向上が課題、ブランドクォリティ運動に取り組む

 鉄道事業は巨大なインフラであり、輸送サービスを高めるという輸送改善の成果は、すべての準備が整った段階で一気に顕在化する。従って、長期的かつ緻密な計画を策定して取り組むことが必要であると同時に、長い交渉期間の中には新しい技術が次々とでてくる。こういったものをしっかりと取り入れて、最終的に顕在化させることが重要だと考える。


質問:自社では不況の影響で出張が禁止され、テレビ会議が中心になって1年半が経過していて、そう考えると今後景気がよくなっても客は戻らない。
 新幹線通勤をしていると、大学生、中には小学生などもいて、そういうところにはまだ新しいパイが存在する。ターゲットを絞って柔軟な料金体系を作るなども考える必要があるのではないか。

回答:空気を運んでも意味がないので、閑散の時期に需要を喚起する、繁忙期には立ってでも乗ってもらえるサービスはどうかという議論もある。テレビ会議の普及などには、移動中でもビジネスができる環境の整備として、インターネット接続サービスなどを拡大したいと考えている。


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