当協会は、2月4日(木)午前8時〜9時30分、東京・内幸町の帝国ホテル『鶴の間』において、大畠章宏(おおはた・あきひろ)衆議院国家基本政策委員長(民主党)を招き、第2回政策首脳懇談会を開催した。これは、科学技術・産業技術に関する政策首脳との自由な意見交換の機会を増やしてほしいとの強い要望に応えたもの。
懇談会は、有馬朗人会長が主宰し、最初に、来賓・講師の大畠委員長が「鳩山政権の新成長戦略」と題して、特別資料に基づいて、従来政権との根本的な違い、新成長戦略の基本方針、日本の資源エネルギー政策、科学技術政策について、綿密に説明した。その後、出席した協会幹部全員が順番に提案や要望を述べた。大畠委員長は、丹念にメモを取りながら聞き、「今後の国際的な大型商談には官民一体の“公社方式”を検討する必要がある。次回は、ぜひ鳩山首相との懇談会を実現したい」と結んだ。
政策首脳懇談会の座席図(帝国ホテル・鶴の間)
有馬会長、「理系でしかも原子力をやっておられた」と 大畠委員長を紹介する
司会の有馬会長が、来賓・講師の大畠章宏衆議院国家基本政策委員長の略歴の紹介と、挨拶をした。 今の内閣について私は理科系の人間として喜んでいる。それは総理大臣が初めて工学博士だということ、そして文科大臣、財務大臣も理系だということだ。やっと理系が第一線で、大活躍をすることに大変喜んでいる。今日おいで頂いた大畠章宏さんも理系で、しかも原子力をやっておられたということで、大変期待している。 大畠氏は民主党では鳩山グループに属されていて、エネルギー戦略委員会委員長として、民主党の総合エネルギー政策をまとめられている。自然エネルギーとか原子力、科学技術政策を一貫として担当され、その方面の専門家であるので、今日は皆様方から是非忌憚のないご意見を賜りたいと思う。
原子力を含めながら新時代の新エネルギー、科学技術政策などのテーマを基に今日の情報を報告する
有馬先生は、文部大臣、科学技術庁長官をされていて、私もご指導を賜ったことがある。隣の鶴田先輩は、私の父の教え子で、鶴田先生の小学校時代に父が田舎の小学校の教員をしていて、運命的な出会いがあったご縁で鶴田先輩にはご交際を賜っている。
今日の参加者を見ると、日本の国の教育分野、あるいは経済分野の第一線の方々が出席されていて、政策首脳懇談会にふさわしい方々から私がどうして選ばれたのかよく分からないが、最新の政策について話をしたい。
有馬先生からお話があったように、原子力を含めながら新時代の新エネルギー、原子力、科学技術政策、こういうテーマを基に今日の情報を報告する。お手元に『鳩山政権の新成長戦略』というタイトルの資料を配布した。鳩山政権の政策は分かるが、経済的な成長戦略が欠けているという指摘なども頂いていることを念頭に先ほどの課題を踏まえて皆様に報告したい。
鳩山首相の「東アジア共同体構想」を韓国が注目
【資料】 | (1)鳩山政権の「新成長戦略」基本方針 | 〔PDF〕 |
(2)新成長戦略(基本方針) | 〔PDF〕 | |
(3)新成長戦略(基本方針) 付属資料 | 〔PDF〕 |
私が準備した資料は、3種類あって、政治経済セミナーの資料は、エネルギーに関する講演と討論会の議事録で、十市勉先生は日本エネルギー経済研究所の専務理事で、エネルギー問題に非常に詳しい先生である。柏木孝夫先生は新エネルギーという意味では、今、日本の第一人者で、現在東京工業大学の教授をされている。3人の鼎談を載せている。参考資料として頂ければと思う。「鳩山政権の『新成長戦略』」という資料に基づいて「鳩山政権の新成長戦略」「日本国の資源エネルギー政策」について報告する。
11月3日に、韓国に行ってきた。10月30日に韓国の国会議員から携帯に電話がかかってきて、今は国際的にも国会議員同士が携帯電話で連絡をとるという時代になった。30日に電話をもらい、11月3日に是非来て欲しいという話だった。
日韓議員連盟で常任幹事をやっていて、日韓議員連盟では森喜朗先輩が会長で、会長が行ったほうが良いと言ったが駄目で、事務局長の額賀先生も駄目ということで、私でいいかと尋ねると、今回は鳩山政権誕生と日韓、日中問題というタイトルだから、大畠先生しかいないという話だった。彼らは鳩山さんが考えた『東アジア共同体構想』を注目していた。
世界はアジアを含めて変化していて、どう対処するかというのは大事な課題
韓国に行ってびっくりしたのは、会場を埋め尽くしている聴衆に大学生が多い。国会図書館の大ホールという大きな会場に若い方がびっしり集まっていた。なぜ若い方がこれだけ関心を呼ぶかというと、日本と韓国、あるいは日本と中国は、常に領土を争ったり、資源を争ったり、物議をかもし出すことが多いが、鳩山さんが東アジア共同体構想を打ち出したので、日本と韓国が手を結ぶかもしれない。それも中国と韓国が手を結ぶことができる可能性が広がる。経済、流通、IT、それから金融、諸々のものが、物流を含めて新しい流れが始まれば、私たちが想像する以上に飛躍的な変化が起こる。韓国の学生が意識をしてこれだけ集まっている。日本の国内よりも、韓国国内で大変関心を呼んでいることが分かった。
ハンナラ党の女性議員から「日本の政治にずっと注目してきたが、一時諦めたことがある。要するに自民党しか政権を担うことができない政治状況がずっと続くのではないか、しかし政権交代になった。おおよそ10年遅かった」「日本はもっと世界の流れを見ながら、それに対応する政治的な体力をつけることが必要である」と言われた。世界はアジアを含めて変化していて、それに対してどう対処するかというのは大事な課題だと思う。
「大畠委員長は自然エネルギー、原子力、科学 技術政策の専門家」「皆様方から是非、忌憚の ないご意見を賜りたい」と、司会の有馬会長
大畠委員長(中)「原子力政策を着実に推進する」と挨拶、有馬会長(左)、鶴田最高顧問(右)
「鳩山さんが東アジア共同体構想を打ち出したので、 日本と韓国が手を結ぶかもしれない」と語る大畠氏
第3の道で新成長戦略を推進する
小泉さんが掲げた市場原理主義から、鳩山さんが考えた人間のための経済へと転換を図ろうという流れは、国の内外に流れ始めている。資料として『新成長戦略基本方針』を配布したので、お目通し頂きたい。
2つの道による成功経験の紹介があるが、第1の道は公共事業を中心とした経済成長、第2の道は小泉改革、いわゆる規制緩和をして経済を成長させる道で、この時代を経て、私たちは第3の道。私たちは公共事業、財政頼みの第1の道、それから行き過ぎた市場原理の第2の道でもない、第3の道を歩む。
それは2020年までに環境、健康、観光の3分野で100兆円超の新たな需要の創造により、雇用を生み、国民生活の向上に主眼を置く、新成長戦略である。
鳩山さんが言ったCO2 25%削減目標というものが、どういうものか、当初は余り現実的でないととらえられていたが、やっとアメリカと中国がこれに参加するというメッセージを出し始めた。最もエネルギーを消費しているのがアメリカ、中国、インドで、この3カ国を引き込まない限り、日本だけではほとんど影響がない。今では逆に大企業からビジネスチャンスとしてとらえ、日本の省エネルギー技術を世界標準にして、世界に打って出るチャンスだという話を時々頂くようになった。
知的財産をベースに世界に打って出る
弁理士会が作った資料に「知財をベースに世界に打って出よう」があり、日本の省エネ技術を知的財産権というものを確立して、国際標準化に取り組み、これをベースに世界に打って出ようという提言である。鳩山政権としては、これをベースにやっていきたい。特に中国の発電の80%は石炭火力発電で、ここが野放図になっている。ここに日本のクリーン・コール・テクノロジーを応用して、中国からのCO2 削減量を大幅に減らしていく。これも全部日本国内のCO2 削減にカウントするということをベースに25%という発言をしている。これをコペンハーゲンの25%の削減の定義にしていく。25%削減を武器にして、世界にCO2 削減の技術を売り込んでいきたい。
各省庁も原子力をよく理解している
最後に有馬先生からお話があった原子力、これまで私は、原子力設計部で東海、浜岡、島根、福島、新潟のすべての発電所の設計、建設、そして事故の時にも事故対策として夜中の12時に駆け参じたことがある。
原子力発電所、今では環境省も「新潟の柏崎の刈羽は立ち上げてもらいたい」と言い出すくらい日本の各省庁、環境省を含めて原子力をよく理解している。同時に民主党の中にも様々な意見があるが、民主党としては原子力政策を着実に推進する。
国が国民に対して原子力政策を徹底して説明する
原子力政策については、私が起草した原子力政策に関する基本方針がある。
原子力利用については以下の通りである。
(1)安全を第一としつつ、エネルギーの安定供給の観点も踏まえ、国民の理解と信頼を得ながら、着実に取り組む。
(2)原子力発電所の使用済み燃料の再処理や放射性廃棄物処分は事業が長期に亘ることながら、国が技術の確立と事業の最終責任を負うこととし、安全と透明性を前提にして、再処理技術の確立を計る。
(3)国が国民に対して原子力政策に関する説明を徹底して行うと共に関連施設の立地、自治体や住民の十分な理解を得るため国と自治体との間で十分な協議が行われる法的枠組みを作る。
皆様からご心配を頂いているが、着実に原子力政策を進める。
以上、現状の報告とさせて頂く。
「需要創造による“第3の道”で成長を狙う」と語る大畠 委員長
2回政策首脳懇談会 出席者 |
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来賓・講師 | 大畠章宏(衆議院国家基本政策委員長) |
(随行) 岡野直治(政策担当秘書) | |
協会幹部 | |
会 長 | 有馬朗人(日本科学技術振興財団会長) |
最高顧問 | 相磯秀夫(東京工科大学理事) |
鶴田卓彦(日本経済新聞社・元社長) | |
諮問委員 | 木村節(リビア国経済・社会開発基金顧問) |
木村文彦(法政大学教授) | |
角忠夫(松蔭大学大学院教授) | |
畑村洋太郎(工学院大学教授) | |
副 会 長 | 安西祐一郎(慶応義塾学事顧問・教授) |
猪野博行(東京電力副社長) | |
児玉文雄(芝浦工業大学大学院教授) | |
小林陽太郎(富士ゼロックス元会長) | |
近藤史朗(リコー社長 代理 永松荘一) | |
野田豊範(東海旅客鉄道副社長) | |
薬師寺泰蔵(慶応義塾大学法学部教授) | |
専務理事 | 橋田忠明(日本経済新聞社・社友) |
理 事 | 荒井寿光(東京中小企業投資育成社長) |
伊賀健一(東京工業大学学長) | |
石田寛人(金沢学院大学学長) | |
榊原定征(東レ社長 代理 岡田武彦) | |
塚本桓世(東京理科大学理事長) | |
森雅彦(森精機製作所社長 代理 森岡正樹) | |
設立発起人 | 小枝至(日産自動車相談役名誉会長) |
渡辺修(石油資源開発社長 代理 阿部理) | |
監 事 | 相亰重信(三井住友銀行副頭取 代理 小野直樹) |
事務局長 | 小平和一朗(イー・ブランド21社長) |
大畠委員長の講演後、有馬会長が「大畠委員長から民主党のやりたいこと、方向、そして原子力について明確なるご覚悟をお聞かせ頂いた。重大な問題を沢山おっしゃったので、言いたいことは沢山あると思う。お一人1分をメドにお話し頂きたい」と述べ、参加者全員から意見が出された。
大畠代議士のお父さんに世話になる
鶴田卓彦:今から70年前、小学校の5、6年の頃、大畠代議士のお父さんが私の小学校に教師として赴任され、虚弱児の私に「何とか健康にならなくてはいかん」と、先生が泊る宿直室で牛乳を沸かして飲ましてもらった。また、先生には沢山人生の教えを受けた。今度は大畠代議士にそのお返しをしようと考えている。
先ほど、民主党の経済政策、その他色々な話があった。経済成長の第3の道という話の中で、環境、健康と観光の3つがあったが、もう1つ付け加えてもらいたいのは科学技術である。原子力発電、これを増やして、中国のCO2 を減らすことが出来るのも科学技術である。
国際性を持った学生の動きを期待
相磯秀夫:大畠先生の韓国の話をされた中で大変驚いたのは、若手が非常に元気で活発に国際的な関心を持っていることだ。それに比べ、日本の大学は非常におとなしくなっている。優秀な学生も増えているが、もう少し日本もアジアなど国際性を持った学生の動きを期待したい。チェンジするには、若手が頑張らないといけない。大学にその辺の施策をして頂きたい。
高速道路の無料化に強い疑問
野田豊範:鉄道事業者の観点から話したい。25%のCO2 削減目標と民主党の政策との整合性が取れていない。高速道路の無料化による鉄道や海運に対する打撃は大きい。経営が成り立たなく公共交通である鉄道の廃止も起こり得る。
現在の国家財政は危機的な状況にある。国鉄の分割民営化時の状況より深刻である。堅実に進めて欲しい。
科学技術の成果を知財で世界に貢献
荒井寿光:グリーン・イノベーションで例えば電気自動車を世界に普及するには、その技術を世界の標準にしなければならない。そのために社会システムを作る。技術開発、科学技術に力を入れる時に特許を取ったものは標準化する。これに必要な体制が国も大学も企業も重要となる。科学技術の成果を世界の文化の発展に貢献するように進めて頂きたい。
電気自動車は原子力で走る
畑村洋太郎:原子力でやっていくしかないのに、世の中が真正面から見ようとしていない。本当は危険を内包していることを認めて使わざるを得ない。電気自動車が環境に優しいというが原子力で走るということをきちんと伝え、全体を考えるようなことをやらないといけない。小学校の教育をフランスと比較すると、フランスは小学校の先生の賛同を得て、きちんと取り組んでいる。
サービスは人材を育てる
角忠夫:製造業のサービス化について、当協会の中の委員会で研究している。サービスのビジネスモデル、品質、生産性、プライシング問題を突き詰めて、21世紀の製造業の発展のトレンドを描きたい。サービスは人を育てる。当協会のサービス・イノベーション研究委員会の方向についても是非関心を持って頂き、ご支援を頂きたい。
科学技術を介護の現場に向ける
木村節:事業仕分けに関心を持っている。スーパーコンピューターがどうして必要か、先端技術はなぜ大事かということを理解するしか解決できない。100歳の父親を去年の末に亡くし、98歳の母親と老々介護をしている。介護の現場は、悲惨な状況だ。先進超高齢者社会の国として、是非科学技術をこちらの方向にも向けて頂きたい。
CO2 削減、コミットメントで利子補給
小野直樹(相亰重信三井住友銀行副頭取の代理):昨年の第一次補正予算で環境省が作られた利子補給制度で45億円計上した。設備投資を行う際、3年間で6%、5年間で10%CO2 削減をコミットメントした企業が融資を受ける際に環境省が利子補給をする。第二次補正予算で計上した来年度分は15億円で、前向きな設備投資を後押しする経済効果がある。制度の維持、拡大をお願いしたい。
MOTと第3の道
児玉文雄:冒頭の話に需要からの成長という表現があったが、MOT 、自然エネルギー、環境、グローバルの観点から見ると、まさしくMOTも第3の道を探らなくてはいけない時期に来ている。エネルギー消費を見ても新興国が既存の先進国とほとんど同じくらいの需要になる。環境にしろ、エネルギーにしろ、日本の技術を考えて積極的に貢献できる。
日本は課題解決型国家になる
薬師寺泰蔵:地球規模の課題を解決する課題解決型国家に日本はしなければならない。日本のやり方が優れていたら外国も真似をする。そうすると日本の指導力が上がる。アジア、アフリカなどのグローバルな問題、感染症とか、低炭素の問題を含めて日本は貢献して日本のリーダーシップを創るという大畠先生のお考えと同じで、是非とも進めて頂きたい。
事業仕分けで、科学技術をないがしろにしないで欲しい
塚本桓世:科学技術創造立国という日本の立場を考えると、大学に対する政策が余り見えていない。民主党のマニフェストに科学技術のことはきちんと書いてある。事業仕分けで科学技術をないがしろにしないで欲しい。アラブの原子力発電所の建設で韓国に取られた。安全性が高いのに持っていかれるのは不思議だ。日本の政治も頑張って欲しい。
大学に環境エネルギー機構を作る
伊賀健一:CO2 削減25%について申し上げたい。直接的な技術や知財あるいは社会システムの提示を大学は行うが、その寄与分をカウントして欲しい。それと同時に、省エネのモデルを提示する。私の大学で環境エネルギー機構というのを作った。これから原子力に関するアジア人材の養成と標準化の講座を作る。大学が世界に寄与する分を評価して頂けると大学の意識が高まる。
日本の原子力技術で国際貢献
安西祐一郎:日本の原子力技術をはじめとする科学技術が、アジア、インド、アフリカなどに平和利用として貢献していくという、グローバルな課題解決の方向性を国家の基本政策として打ち出して頂ければと考えている。大学は内向きになっており、大学や若い人たちの目を国際的な方向へ向けさせないといけない。科学技術政策や人材育成などの面でアジア諸国、特に韓国などと一致協力してやる道をつけて頂きたい。
日本は原子力の輸出を考えてこなかった
石田寛人:長らく原子力をやってきて、今の状態は甚だ肩身が狭い。原子力が駄目だから原子力を辞めたのではなく、原子力という看板を挙げていたのでは優秀な学生は来ないというのが理由。原子力に対してネガティブなスタンスが政治的に最も安全だという認識。先ほどから話が出ているように日本の原子力は、輸出とか外向けを考慮してこなかった。
排出権の購入は、国にとっては無駄
岡田武彦氏(榊原定征東レ社長の代理) :CO2 の25%削減は、15%位は、日本国内の色々な技術でカバーし、残り10%位は排出権を購入するという考え。排出権を購入するというのは、国にとっては無駄なことである。国民全体の議論の中で、国益、国の金をどう使うかということについて皆が分かるよう説明して頂きながら、今後、どうしていくかの議論をして頂きたい。
省エネタイプに買い換えることでCO2 削減
森岡正樹氏(森雅彦森精機製作所社長の代理) :CO2 25%削減など産業構造の変化をビジネスチャンスとしてとらえたい。CO2 削減、省エネに取り組むことで儲かるという政策があればと思う。当社の最新の工作機械は、従来機よりも20%から30%消費電力が削減されている。手持ちの設備、機械、工場が新しくなることで省エネタイプにできる。産業部門においてもCO2 がもっと削減できるのではないかと思う。
働くことで年金が減額されることが、働く意欲を削いでいないか
小平和一朗:日本の経済はデフレ・スパイラル状態にある。労働人口の減少が気になる。退職する60歳以上の人口は年々増加していて、有能な人材が未就労の状態でいる。その中には仕事をしたいと希望している人達も多い。その能力を求める職場は沢山ある。働くことで年金が減額されることが働く意欲を削ぐ一因となっており、雇用を促進するように年金制度改革をご検討頂きたい。
技術開発が実を結ぶのには時間がかかる
阿部理氏(渡辺修石油資源開発社長の代理):海外事業で最近力を入れているのは、カナダのオイルサンドの会社とイラクでは石油権益を獲得して取り組んでいる。リスクをかけて開発しないと地下資源の確保は難しい。オイルサンドの技術開発に着手して30年、ようやく世界のトップランナーと肩を並べて走っている。技術開発が実を結ぶのに時間がかかることを理解して頂きたい。
日本が存在感を発揮できるキーワード
永松荘一氏(近藤史朗リコー社長の代理):『新成長戦略』の中にも問題解決型の処方箋の輸出という言葉が出ているが、これがグローバル社会における日本が存在感を発揮できるキーワードだと思う。原子力運転のノウハウや経験技術、新幹線の建設、運用技術などの新しい価値をモノと一緒に輸出、供給していく。日本で実践したビジネスモデルを、グローバルに提供できる政策や人材育成を期待する。
人材育成には将来が見えるような姿を示す
木村文彦:デンマークで作った場合と中国で作った場合とで、3倍から8倍くらいCO2 排出量が中国のほうが多いという論文がある。経済性だけで中国に進出するのは地球全体として考えたら疑問がある。これからは、モノを作るという技術に関与していく。それには人材育成が一番大事で、そのためには将来が見えるような姿を示していくことが大切だ。
官民一体で、日本は世界に寄与する
橋田忠明氏:資源エネルギー、環境、IT,医療などの重要な問題を考えると、日本の最先端技術で世界に寄与する絶好のタイミングを迎えている。技術開発、研究開発の税制、特別融資など制度面での世界一のサポート体制を整えて欲しい。先ほどアラブの原子力発電で韓国が勝利したとの話があったが、政府保証がしっかりし、官民一体で取り組めば、日本が世界に寄与することは出来る。
大畠委員長は鳩山首相の側近ナンバーワン
岡野直治:大畠の政策担当秘書をしている。このような機会を作って頂き感謝している。私は鶴田最高顧問の水戸の高校の後輩で、大変立派なジャーナリストがおられるというので、マスコミを目指して時事通信社に入った。皆様のお話を伺って感じたことは、必ずしも正確に海外の情報が入っていないし、それから日本の情報も配信できていない。今でも時事と共同が分割されている。国際的な本格的な通信社が存在しない。
大畠議員のプロフィールを補足したい。鳩山首相の側近ナンバーワンで、「政権交代を実現する会」では、鳩山さんが会長で政権交代が実現できたので、「政権公約を実現する会」の会長が大畠議員である。よろしくお願いしたい。
国が前面に出て原子力問題に取り組んでいただきたい
猪野博行:先ほど大畠先生より原子力に力を入れていくという力強いお言葉を頂いた。柏崎刈羽の6、7号機は、運転再開となった。原子力の稼働率は海外90%で、日本は地震もあり70%前後と上げていく必要がある。国が前面に出て、一緒になって地元の人の安全と安心に取り組んで頂きたい。2020年に向けて原子力発電を9〜10基新設しなければならない。
市場主義がないと産業は成り立たない
小枝至:市場原理主義から人間のための経済というのは、大変心地良いが、原理主義はともかく市場主義がない限り産業は成り立たない。企業はどんな企業でもグローバルな競争をしている。日本にだけモノを売っている会社も競争相手はアジアにいる。大学にお願いしたいのは、学生に自信を持たせる教育を考えて欲しい。また、電気自動車はエネルギーコストが格段に低い。
成長戦略で成長の場をどこに求めるのか
小林陽太郎:成長戦略で新たな需要や雇用を作る。第1、第2と違うのは成長戦略で成長の場をどこに求めるかが違う。さらに違うことがあれば、きちんとなされる必要がある。もう一つは、大学教育など、本来何が正しい課題なのかをきちんとすることが、中長期でも短期でも必要だ。鳩山総理と経済界とは腹を割って話し合う場が無い。話し合う機会を作って頂きたい。
中国、韓国、日本が共同して研究
有馬朗人会長:先週、中国の大学、日本の大学の方に集まって頂く会議があった。そこで私は、中国、韓国、日本が共同して、例えばリサイクルにしても新エネルギーにしても、国際的な大研究所をこの3カ国が協力して、日本、中国、韓国のどこかにまず建てたらどうかということを進言した。問題になるのは、クリーンエネルギー、グリーン・テクノロジーを中国へという話もあったが、必ず起こるのが、知的財産権をどうするかという問題だ。中国に持っていくと中国で直ちに作ってしまうという話があるが、その点をきちんと国として立てていく必要がある。中国、韓国などと相談して、知的財産権を確立させながら、グリーン・テクノロジーなどの応用を考えていくべきだと思っている。
日本は世界に率先して将来のエネルギーを考える
資源に関しても心配をしていて、あと20〜30年すれば、石油資源もピークを過ぎて、やがて無くなる。その対策を今のうちにきちんと立てて、本当に太陽でまかなうならどうしたら良いか、そのためには相当の金を使って技術を進めなければいけないし、地下資源が無くなって残っているのは、太陽と磁力と原子力しかない。将来のエネルギーをどうするかということを、今から日本は世界に率先してきちんと立てておくべきだ。そのためには、畑村さんがおっしゃったように、小学校からエネルギー問題、資源の問題などの教育をきちんとしておくべきだと思う。この点はフランスが進んでいる。日本も今度の理科系に関する指導要領の変更で、エネルギーを大変重要視するようになったことを喜んでいる。
「大畠氏のお父さんにお世話になった」と語る 鶴田最高顧問
「高速道路無料化での鉄道への打撃は大きい」と語る野田氏(右)、相磯氏(中)、鶴田氏(左)
「特許と標準化を基に、科学技術の成果を世界の文化の発展に貢献するように進めて頂きたい」と語る荒井氏(右)、野田氏(左)
「サービス化での製造業の発展のトレンドを描きたい」と語る角氏(右)、隣は畑村氏(左)
「利子補給制度、前向きな設備投資を後押しする経済効果がある」と報告する小野氏(右)、隣は木村氏(左)
「MOTも第3の道を探らなければいけない時期に来ている」と発言する児玉氏
「日本は科学技術外交に力を入れるべきだ」と語る薬師寺氏(左)、隣は塚本氏(中)、伊賀氏(右)
「事業仕分けで科学技術をないがしろにしないで欲しい」と要望する塚本氏
「日本の原子力技術は、諸外国に平和利用として貢献するとの方向性を国家の基本政策として打ち出して頂きたい」と語る安西氏
「原子力が駄目だから原子力を辞めたのではない」と語る石田氏(右)、隣は安西氏(左)
「排出権の購入は、国にとって無駄なことである」と語る岡田氏(左)、隣は森岡氏(右)
「技術開発が実を結ぶのに時間がかかる」と語る阿部氏
「経済性だけで中国に進出するのは疑問がある」と語る木村文彦氏(中)、永松氏(左)、橋田氏(右)
「正確に海外の情報が入っていないし、日本の情報も配信できていない」と語る岡野氏
「 2020年に向けて原子力発電を9〜10基新設しなければならない」と語る猪野氏
「大学は、学生に自信を持たせる教育を考えて欲しい」と語る小枝氏
「鳩山総理と経済界とは腹を割って話し合う場が無い。話し合う機会を作って頂きたい」と語る小林氏(左)、有馬会長(中左)、大畠委員長(中右)、鶴田氏(右)
「中国、韓国などと相談して、知的財産権を確立させながら、グリーン・テクノロジーなどの応用を考えていくべきだ」と語る有馬会長
「率直な意見を賜り感謝している」と大畠委員長からお礼
大畠委員長から「率直なご意見を沢山賜りまして感謝している」とのお礼の言葉が述べられ、最後にまとめの発言があった。
まとめを語る大畠委員長(中)、有馬会長(左)、鶴田氏(右)
日本は誰が主体となっているのか分からない。体制として不十分だった
UAEの原子力発電所の4基の受注の件は、前政権からこの問題に一生懸命取り組んできた。最終的には円高、ウオン安、これが非常に効いた。UAEの皇太子が実権を握っておられるが、鳩山さんも電話をして、向こうからも返事があった。日本の原子力の安全性は高く評価されたが、円高、ウオン安で価格が20%も違った。フランスと韓国と日本の3つの国で争った。フランスは公社、日本は10社位が集団で、誰が主体となっているのか分からない。体制として不十分だったと反省している。
今後は、公社を作って対応を考える
国際的な大型プロジェクトは、国として一つの公社的なものを作って、そこに各企業が参加して、窓口は公社が対応する。今、動き始めている。日米問題が影響しているとの話もあるが、クリントン長官も現地に飛んで、向こうの皇太子殿下とも話をし、全面的にアメリカとしてバックアップしてくれたが、コスト競争で負けてしまった。
この場に鳩山総理を呼んで頂きたい
経済界との関係について小林先生からもお話を伺いましたが、経済界との関係、この場に鳩山総理を呼んでもらうのが、導入部門として良いと思う。時間を取って是非一度鳩山首相にここに来て頂いて、理工系の総理として、皆さんに率直なお話をし、今日のようなお話を頂ければ、鳩山も大変元気が出ると思う。本日はありがとうございました。