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第5回政策首脳懇談会を開催(2012年1月24日)

日本の経済と中小企業の将来を語る
  岡村 正 日本商工会議所会頭
MOTの活用が地域中小企業の発展のベースになる

 当協会は、本年1月24日(火)午前8時〜9時30分、東京・内幸町の帝国ホテル『鶴の間』で、日本商工会議所の岡村正会頭を招き、「日本経済と中小企業の将来--MOTへの期待」とのテーマで、第5回政策首脳懇談会を開催した。従来の政権首脳に加え、新たな経済団体トップとの意見交流である。
 席上、岡村会頭は(1)被災地の産業拠点の復興(2)社会保障と税の一体改革の推進(3)中小企業を中核とする成長戦略と消費税の値上げ(4)原発再稼働と再生エネルギーの活用・拡大−−などが重要であり、今後の進路は、蓄積された高い技術力とイノベーションによる科学技術創造立国しかないと講演した。さらに、政府の政策の遅滞は限界に来ており、その迅速な実行が急務であると強調した。
 その後、出席した協会幹部全員が提案や意見を述べた。岡村会頭は、丹念にメモを取りながら聞いた上で、商工会議所のこれからの新しい役割として「地域経済の活性化と、その“結節点”になることだ」と意欲を示した。


岡村会頭(右)「新たな時代の潮流に適用する必要がある」と語る、
有馬会長(左隣り)、相磯最高顧問、野依副会長、安西副会長(左端)。

岡村日本商工会議所会頭の講演

 橋田忠明専務理事から「本日は、ご多忙中、日本商工会議所の岡村正会頭を来賓・講師としてお招きした第5回政策首脳懇談会を開会する」との開会宣言で会合が始まった。
 有馬朗人会長から「今日はお忙しいところお集まり頂き、ありがとうございます。原子力発電所、津波の対策をどうするかなど様々な問題がありますので、ぜひご議論を賜りたいところであるが、大変ご多忙のところ、日本商工会議所の岡村正会頭にお越し頂いて『日本経済と中小企業の将来―MOTへの期待』ということでお話を頂く」との挨拶があった。

商工会議所が考える4つの重要課題

 本日はこのような席にお招き頂いて、大変恐縮を致している。今、日本商工会議所として、中小企業のためにどんなことをやっているのか、中小企業の問題点はどういうところにあるのか、そんな点を中心に話をさせて頂きたい。
 昨年は「国難に見舞われた1年だった」と言える。今後の日本経済が復興、再生に向けて、政府が強力なリーダーシップを発揮する必要がある。そして、重要政策課題の実現に果敢に取り組んで頂きたい。
 商工会議所が考える重要課題を4つに整理した。

(1)被災地の復興
 第1に、被災地の復興である。被災地の経済を牽引していた企業が、迅速に活力を取り戻すこと。そして、雇用を回復させて、地域が復興していくような政策を実行していく必要がある。
 今回の震災の回復プロセスは大変歯がゆい。ようやく2月10日に復興庁が設置された。復興庁が特区制度の活用をはじめ、被災地の産業拠点の復興に最大限の努力をして頂きたい。
 復興事業が、次なる成功のバネにならなければならない。
 3次補正の執行が既に遅れており、この遅れの原因が、県や市町村における発注業務の滞りである。民間もこれに協力する必要があるということで、先日、商工会議所にも、人員を派遣して欲しいと要請があり、人選をして送り込もうとしている。
 しかし、こういった発注業務の量は、前から分かっていた話であり、そういう意味で復興庁ができるということは、形ばかりの復興庁ということになって、またタテ割りの政策になっていくのではないかという危惧はある。
 現地は現地の方で、自分たちの村、町がこれからどういう形を取っていくのかというデザインを、自ら描いて欲しい。日本の地方都市、地方の社会のあり方のモデルを、ここで作ってもらえればありがたい。

(2)社会保障と税の一体改革

 2番目に、社会保障と税の一体改革で、これは避けては通れない。しかし、政府が発表した素案を見ると、実に社会保障の給付の拡大に重点が置かれ、ばら撒き型の政策になって、社会保障の内容の全容を明らかにしていない。例えば70歳から74歳までの医療費の自己負担については、今は1割になっているが、本則は2割というので、2割に戻して欲しいなど、高所得者に対する負担の増加等々が含まれているはずだと思っていたが、給付の拡大のみに重点が置かれている。これでは消費税を10%に上げても、将来に渡っての持続可能な社会保障制度にはならない。
 一昨日、岡田副総理と藤村官房長官が「消費税率をさらに上げる必要がある」「10%では止まらない」と言っているが、給付の効率化に対して、目が届いていない。給付を減らして、消費税の引き上げとの整合性を測って、負担が集中しないように、全体をパッケージとして改革を果敢に進めるべきだ。
 消費税は、日本商工会議所の中でも、大変な議論がある。4、5年前は、消費税の話を口にすると、途端に全国から反対の声が上がってくる状況であったが、さすがに社会保障の制度のあり方を検討していく中で、消費税やむなしという機運になってきて、議決を経て「消費税についてはやむなし」という結論に至った。
 しかし、消費税の引き上げは、景気や中小企業に大きな打撃を与える。1%消費税を上げると0.3%GDPを引き下げると言われる。従って、経済への影響を最小限に留めるという措置が必要であり、つまり成長戦略が十分に働いていて、国民の上昇意欲が、あるいは国の成長ペースが上がることが必要だと思う。
 従って、成長戦略と合わせてこの消費税の引き上げがセットになって、国民の理解が得られるのではないかと思う。

(3)成長戦略

 第3番目が、成長戦略。何としても軌道に乗せなければならない。2014年の消費税の引き上げの問題は、しっかりとした成長戦略が必要である。震災復興と社会保障を同時に、成長戦略が実績を上げていかなければいけない。しかしながら、国内外の経済環境も極めて不透明な状況にあり、持続的な成長路線を歩むことは大変なことであるが、もう一度、地域経済と雇用の担い手ということを考え、サプライチェーンの根幹を支える中小企業の活力を取り戻すことが不可欠である。
 わが国の中小企業の割合だが、企業数が約420万社。その内の99.7%が中小企業である。それから従業員の数で約7割が中小企業である。また、製造業では付加価値額の5割を占め、さらには消費税収の5割、法人税収の約4割を占めており、中小企業がわが国の経済と雇用において大変重要な役割を担っている。

日本の中小企業を、中国、韓国、台湾が誘致合戦

 大震災でサプライチェーンが寸断され、中小企業が、わが国のモノづくりにおいて欠かすことができない存在であることが再認識されたが、海外から見ても、日本の中小企業の広がりに対する関心が非常に強い。特に中国、韓国、台湾からの誘致合戦が活発化しており、我々が気付かない間に、中小企業が台湾、中国、韓国に移るということが、起こるのではないかと心配している。中小企業が、海外に進出することは決して悪いことではないが、今までのように甘い汁を飲まされて、技術流出するようなことがあってはいけない。
 中小企業政策が、成長戦略の柱として位置付けられることが必要である。政界トップにお会いしてこの話をすると、「日本の中小企業は大事だ、宝だ」と言うが、具体的な政策が出てこない。今まで金融や税制については、それなりの考慮をして頂き、かなり優遇された。しかし、肝心の起業、創業を、本格的に成立させるための政策が打たれてないのは残念だ。
 一昨年にまとめられた成長戦略の中には、起業百万社というのが謳われているが、これも現在は絵に描いた餅になってしまった。先ほど420万社と申し上げたが、実は、1990年には500万社あった。つまり100万社が、この20年間で減った。必ずしも減ることが悪いこととは限らないが、創業率が廃業率を大きく下回っている事情を、考えなければいけない。
 創業して、いわゆる、まともな企業になるまでには、相当に時間がかかるわけだが、そういう意味で政策が1,2年の支援に留まっている。従って、「死の谷」が越えられない。創業率の向上のために、政府はもっと頑張ってもらいたい。

国際戦略総合特区と研究開発投資の促進

 そして、海外の誘致攻勢に対して、産業の空洞化を防がなければいけない。これは、国内が魅力のある投資環境になっていなければいけない。法人税はもとより、復興の特区制度、それから国際戦略総合特区が決定したが、これらをフルに活用して新成長戦略につなげていかなければならない。また、日本は科学技術創造立国として発展する方法以外に先はないと確信しているので、政府の研究開発投資を一層促進して頂く必要がある。政府に対して、引き続き働きかけをしていきたい。
 さらには、成長戦略のもう一つの柱として、経済連携協定の締結・推進があり、農業、漁業の強化はもとより、農業、漁業の問題が地域経済に影響を及ぼすことのないように、配慮を十分に行って、タフなネゴシエーションをして頂きたい。このTPPについても、商工会議所としては、北は北海道、特に南は九州など、農業を主体とした地域があり、ここからの反対も非常に多かった。日本全体のことを考えつつ農業、漁業の努力不足をどうやって補っていくかという議論をしていく中で、少なくともこの問題は、十分に理解するという風に、北海道や九州の皆さんも納得をしてくれた。ぜひとも経済連携協定の締結を進めてもらいたい。

(4)エネルギー・環境戦略

 4番目が、エネルギー・環境戦略。本日この問題を話す時間はないが、原発の再稼働をはじめとした短期の問題と、再生可能エネルギーの活用・拡大などの長期の問題とをしっかり区分して、早急に解決を図る必要がある。当然のことながら、再生可能エネルギーの開発促進支援を増強することは言うまでもない。
 こうして考えると、この4つの課題の解決策には、それぞれ緊密な連携が必要であるため、国難を克服し、立て直すための体制をどうするかという点については、ぜひ皆様方のお知恵を拝借して、進めなければいけないと思っている。

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「困難の克服に、政府の強力なリーダーシップが必要」と語る岡村氏。

第5回政策首脳懇談会 出 席 者
来賓・講師 岡村 正(日本商工会議所会頭)  
協会幹部  
会 長 有馬朗人(武蔵学園学園長)
最高顧問 相磯秀夫(東京工科大学理事)
諮問委員 木村節(リビア国経済・社会開発基金顧問)
小島 明(日本経済研究センター研究顧問)
嶋矢志郎(地球環境財団理事長)
角 忠夫(松蔭大学大学院教授)
副会長 安西祐一郎(日本学術振興会理事長)
  國井秀子(リコーITソリューションズ会長)
  児玉文雄(東京大学名誉教授)
  小林陽太郎(富士ゼロックス元会長)
  白井克彦(早稲田大学学事顧問 ・放送大学学園理事長)
  野依良治(理化学研究所理事長)
  松本正義(住友電気工業社長 代理 吉海正憲)
  薬師寺泰蔵(世界平和研究所理事研究顧問)
専務理事 橋田忠明(日本経済新聞社・社友)
理  事 秋元 浩(知的財産戦略ネットワーク社長)
  荒井寿光(東京中小企業投資育成社長)
  伊賀健一(東京工業大学学長)
  石田寛人(金沢学院大学名誉学長)
  川村 光(アサヒフードアンドヘルスケア社長代理 唐澤範行)
  榊原定征(東レ会長 代理 前田一郎)
  柘植綾夫(芝浦工業大学学長)
  西河洋一(アーネストワン社長)
  則久芳行(三井住友建設社長 代理 松尾信介)
設立 相亰重信(SMBC日興証券会長)
発起人等 河村有弘(日経BP社特別参与)
  藤本隆宏(東京大学経済学研究科教授)
  渡辺 修(石油資源開発社長 代理 阿部理)
  森 祐子(ハチオウ社長)
事務局長 小平和一朗(イー・ブランド21社長)

【岡村正氏の略歴】
(2012年1月現在)
学歴:1962年3月東京大学法学部卒業、1973年5月ウィスコンシン大学経営学修士課程修了、
職歴:1962年4月鞄月ナ入社、94年6月取締役、96年6月常務取締役、
2000年6月代表取締役社長、05年6月取締役会長、09年6月相談役
主な公職・団体歴:2007年11月東京商工会議所会頭、07年11月日本商工会議所会頭、07年11月(社福)東京都共同募全会会長、07年11月日本銀行参与、07年12月中小企業庁中小企業政策審議会会長、09年10月日本郵政株式会社社外取締役、11年6月鰹、工組合中央全庫社外取締役

中小企業の活力強化と地域活性化

 次に、中小企業の活力強化と地域活性化に向けて、どんなことをやっているのかを少し申し上げたい。  514の商工会議所が全国にあり、東日本大震災の復旧・復興には大きな支援活動を展開した。具体的には緊急物資の輸送などの物的支援をはじめとして、義援金の拠出、あるいは経営指導員を含む職員の被災地派遣といった人的支援、さらには被災地産品の即売会、あるいは東北観光キャンペーンなどあり、風評被害対策についても全国挙げて取り組んだ。
 成果を上げている事業に、遊休機械のマッチング支援プロジェクトがある。被災地で、事業再開のメドが立っていない事業者に対して、日本各地で眠っている遊休機械を、無償で提供してもらう運動を起こし、現在は、既に250件のマッチングが行われて、被災地の企業から大変感謝されている。なお、1,000件を超える要望があり、しっかりとこれから続けていかなければいけない。この辺が、商工会議所のネットワークの強さで、誇りに思っている。
 被災地の復興は、緒についたばかりであり、地域経済や雇用を支える被災地の中堅中小企業の事業再開にも至っていない。特に、福島県では、原発によって今なお深刻な状態が続いており、支援活動に全力を傾注したいと思っている。また、平時における地域に根差した細かな事業活動が、結果として有事におけるスピーディな支援につながった。

産官学の連携をコーディネート

 産官学について、どんなことをやっているのかを話したい。1つ岐阜県の多治見市は、陶磁器の生産が盛んな地域だが、中国産が流入して斜陽化をたどっている。
そこで、多治見の商工会議所が、名古屋工業大学や地元の窯業者と産官学の連携をコーディネートして、高気温対策機能を付加したタイルの研究開発を行って、熱帯地域の高速道路の舗装用に使われているという例がある。
 それから新潟県の燕市に「磨き屋シンジケート」というものがあるのをご存知かと思うが、これは燕市の商工会議所が、地元の中小零細企業の活力強化を狙って設立したもの。さらに、東京商工会議所では首都大学東京との連携を促進させ、新製品、新技術の開発、あるいは新産業の創出を促進していくために、2月に業務協定を結ぶことにした。このほかにも、多くの都市で、産学連携をはじめとする地域連携の結節点としての機能を果たしているケースが多い。しかし、良いことばかり並べてきたわけだが、日本の中小企業の大きな問題点として2つ意識をしなければならないと思っている。
 1つは、海外進出に対するノウハウが不足している。今までは内需中心、日本の大企業に対する下請けという形で進んできた技術が、今度は海外へ展開しようということになると、ノウハウがない。これは、マーケティングの問題もあるし、プライシングの問題もあるし、あるいは技術的なスペックの問題もある。
 もう1つは、日本の3次産業の生産性が非常に低い。ある統計で見ると、アメリカの3分の2くらいしか生産性がないと言われている。
 この2つの問題に数年前から取り組んでおり、特に海外進出については国際展開のためのアドバイザー制度を作り、現在では100社を超える企業に志願して頂き、現実にマッチングを取りながら、海外への進出の支援をして頂いている。またITについても専門委員会を作り、中小企業の問題にこれから取り組もうということで、組織化をしたところである。

科学技術創造立国の実現

 最後に、科学技術創造立国の実現ということで、話をしたい。今日お集まりの先生方が、今まで何回となく力説されてきたことで、私から大きな声で申し上げる必要はないと思うが、日本のあるべき姿は、科学技術創造立国しかないと確信している。日本に蓄積された高い技術力を使って、この技術力に裏打ちされた、絶え間ないイノベーションによって、日本は発展してきたわけで、科学技術創造立国を日本の将来の旗印に掲げるべきだと思う。
 しかし、1990年から2011年に至るまで、名目GDP成長率は全く止まった状態で、成長からかけ離れた日本経済になって、すでに20年になる。実質成長率はそれでもあるという議論が片方であるが、これはデフレが、結果的にそのような影響をもたらしていると言う方が正しいと思う。そういう意味で、これからの日本経済は、もう一度根幹に立ち戻って、名目GDPの成長に向かって努力しなければいけない。
 20世紀と21世紀では、マーケットのニーズが大きく変わっている。先進国では、すでにモノの豊かさは行き渡っており、むしろ心の豊かさを求める時代に入ってきている。一方で、発展途上国については、これからモノの豊かさを追求しようという段階である。従って、国内や先進国に対する需要に対しては、心の豊かさを求めるための製品を用意していくことが必要であるし、発展途上国については、モノの豊かさの原点になる、インフラ事業について、これから積極的に力を入れていかなければいけない。
 すでに中国のGDPは、日本を上回っており、世界第2位の経済大国というアイデンティティが完全に失われた。いずれは、インドにも抜かれる。1人当たりGDPの議論は置くとして、GDPは国力の象徴であるので、日本の存在価値をどこに求めるのかは、「科学技術創造立国」ではないのかと思う。日本の成長は、質の高い技術ノウハウを活用して、科学技術とMOT(技術経営)が合体して、日本産業の基盤を作っていかなければいけないと思う。

思い切ったイノベーションを起こし、時代の潮流に適応

 成長戦略の中心は、科学技術創造立国であるということを明確に定めて、そのために何をしなければならないのかを、これから考えていく必要がある。特に中小企業の役割は非常に大きいし、その意味では、「死の谷」を超えるための、政府の施策が必要だと思う。
 釈迦に説法だが、研究開発投資は、日本の政府予算の研究開発投資は、GDP比で0.8%だが、中国やアメリカはすでに1%を超えている。もっと予算を重点的に配分すべきであろうと思う。グローバルな大競争時代に、今後日本が進むのはそう簡単なことではない。
 東日本大震災からの完全復興にも、相当の時間を要する。しかし、過去、我々の先達たちは、各時代における様々な変化の難局に対し、英知を結集してイノベーションで乗り越えてきた。我々にその力がないということではない。そのために、思い切ったイノベーションを起こして、新たな時代の潮流に適応する必要がある。国内で眠っている素晴らしい技術を世界に向かってどう発信していくのか。サービス産業の生産性を上げて、サービス産業の海外への進出をどう支援していくのかを考えていく必要があると思う。

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政策首脳懇談会の座席図(帝国ホテル・鶴の間)



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「商工会議所のネットワークの強さを誇りに思う」と語る岡村会頭(中央)、有馬会長(左)、小林副会長(右)。

協会役員との意見交流

◇ 柘植綾夫氏  教育と科学技術とイノベーション

 第4期の科学技術基本計画には、イノベーションと科学技術政策を同時に進める、これは非常に良いと思う。一方で、次世代という「教育」という言葉がない。人材育成という言葉に変えて、努力してくれているのはよく分るが、やはり教育と科学技術とイノベーションという、国造りの3要素をしっかり打ち出して進めてもらわないと、人材育成という言葉に変えたことの弱みを感じる。我々それぞれの立場で、意見を表出していくべきである。

◇ 相亰重信氏  円高を踏まえた政策、日本の将来を

 貿易収支では、エネルギー価格の高騰などから、赤字になっている状況だが、海外に進出した企業からの配当収入は相当莫大で経常収支で見ると黒字になっている。これが円高の要因になっている。円高を踏まえた上での政策、あるいは日本の将来のあるべき姿を考えていかざるを得ない。そのためには、科学技術立国は大変正しい姿であると思うし、我々自身が海外進出をするのは、必須の課題であり、教育の問題なども非常に重要になる。円高をベースにしたものの考え方が必要だ。

◇ 吉海正憲氏(松本正義住友電気工業社長の代理)
新しい創業機会の日本的な環境づくり

 中小企業の底力は、成長の大きな基盤である。全体の趨勢自体はある意味で世界の流れとして止めようがないとは思うが、問題は国内の創業機会がなぜ高くならないのかということだ。ある意味でベンチャーという概念と、中小企業政策というものが、どんな新しい創業機会を作っていくのかに、新しい知恵や工夫がいる。そのためには、政府の政策はもとより、大学とか、市場構成に色んな形で関わっている企業の立場を含めて、新しい創業機会の日本的な環境づくりとは何かが重要だ。

◇ 小林陽太郎氏  組織的な持続的なトレーニング展開

 中小企業の海外進出について、ノウハウが不足している。それに絡んで、人を教育していく、訓練をしていく、それに既存の教育機関、あるいは政府関係の政策機関を総動員して、語学の問題と、異文化の接触の問題、そして基本的な経営、特に海外における経営状況などについて、組織だって持続的にトレーニングを展開する必要がある。例えば国際大学、大企業の方々が中心だが、半年くらいの教育でTOEFLをベースにすると、200点くらいの進歩がある。そこでのトレーニングが、中小企業の海外進出に役に立つ。

◇ 白井克彦氏  地域の活性化が課題

 放送大学は、日本全国に50数カ所の学習センターを持つ。地域の国公立の大学や私立大学に間借りしている。どう活性化するかを考えているが、地域の活性化と、地域での中小企業の話などあるが、そういう所を今後どうしていくか、雇用をどう生み出していくかを考えると、人材育成がコアになる。国立大学などと協力をしていきたい。どう各地域とやったら良いのか、商工会議所にも相談したい。中小企業の海外進出もあるが、日本の地域をどれから構成していくか、可能性はどこにあるのかについて、若い人達にもっと考えてもらう場面を作れないかが課題である。

◇ 阿部理氏(渡辺修石油資源開発社長の代理)
大企業の人材を中小企業が求める人材とマッチング

 団塊の世代の大量退職が進行しつつある中で、企業活力を維持するためには、大企業の中では、若い人の機会を増やしていかないといけない。オールド・ジェネレーションは、大企業からは退場せざるを得ないと思うが、一方で社会保障の問題とも絡むが、まだまだ働ける方がいる。大企業にいた方のノウハウを、中小企業の必要とするところのノウハウとうまく結びつけることによって、皆さんがハッピーになるということがある。そのマッチングの努力が非常に求められているのだと感じている。

◇ 松尾信介氏(則久芳行三井住友建設社長の代理)
インフラだけでは復興できず、雇用の創造と新産業の創出を

 本格的なインフラ整備は、いまだ大きなグランドデザインが示されないため、予算はついたが、立ち上がりが遅れている。インフラだけを復興させることで、果たして復興は成り立つのだろうか。そこに雇用を創造する、新しい産業をそこに生み出すという形が、本来の意味での東北地方の復興につながる。特に民間の企業が、活力のある企業として操業できるのか、今と違った形の産業形態ができるのか、従前の1次産業を中心にした復興と、新しい産新しい産業がどういう組み合わせできるのか、注目している。

◇ 秋元浩氏  知財の人材を育成するのに10年かかる

 私が専門としているライフサイエンスであれば、1人前の知財の人材を育成するのは、技術が分り、知財が分り、事業が分るのに、10年かかる。10年かかって人材を育成していたら、また中国、韓国に追い抜かれる。当面は、優秀な人材をグローバル・スタンダードでリクルートしながら、10年計画で一貫性を持って人材を育成していく。実際の産業できちんと修羅場をくぐったようなところで育成していく。すべての根幹は人材なので、人材を育成すると同時に確保する。当面は緊急避難的なこともやらざるを得ない。 

◇ 有馬会長 重要なポイントを、ありがとうございました。

◇ 藤本隆宏氏  国内現場の強化と海外進出をセット

 復興現場と日本全体のモノづくり現場を直接結んでいくのに、復興問題解決センターを作る。例えば、東北6校の高専にOBが常駐して、駆け込み寺風の相談できる場所を作る。現場に近いのは中小企業だから、支援を頂けると良いと思う。中小企業の海外進出で中小企業庁が海外進出に力を入れ始めているが、軸足が行き過ぎているのではないか。中小企業の海外進出、確かに彼らは1カ所以外へ出られないので、どこへ出るのかを含めて、迷いなく出られるように、産官学全部合わせてやる必要がある。同時に国内の現場の強化と中小企業の海外進出をセットで考えないと危ない。

◇ 嶋矢志郎氏   原発は絶対的な安全対策が義務付け

 「脱原発」を日本は掲げていくべきである。原発は3.11の福島事故を受けて、絶対的な安全対策が義務付けられているということだと思う。それから、使用済み核燃料の処理技術が確立できないまま、50年、60年歩んできてしまったことへの反省をもとに、この2つにどう楔を打つか。トリウム熔融塩炉、50年も60年も塩漬けにされてきた。トリウムは、有馬先生をはじめ旗を振って頂いているが、原子力委員会に向けて、原子力政策の中にトリウムを1行でも入れて頂きたい。

◇ 角忠夫氏  モノづくりプラスサービス

 製造業は、モノづくりだけでなく、モノづくりプラスサービスを提供することによって、客はソリューションを求めているという面から言っても、製造業自体がサービスに特化しなければいけない。企業それぞれがどういうビジネスモデルでサービスに特化していったらいいのかという観点からは、検討する問題がたくさんある。これからのエグゼクティブは、サービスがキャリア・ディベロップメントの重要な要素になる。サービスで鍛えられた人間は、人の痛みの分った、現場に立脚した強いリーダーに育っていく。

◇ 唐澤範行氏(川村光アサヒフードアンドヘルスケア社長の代理)
中小企業と大企業は、主従でなく連携する必要がある

 中小企業の海外進出、フィールドの中で経営をするための場所と資金の提供が不可欠と思う。中小企業の活性化には、大企業と連携し、海外におけるフィールドの提供と資金の連携が不可欠と思う。その前提には、その企業の持つ、コアの価値を創造する力が国内で発揮されてないと、海外に出る意味がないが、それがあれば、中小企業と大企業は主従でなく、連携して、フィールドあるいは質の提供、資金の提供で、連携する必要がある。

◇ 児玉文雄氏  デジタル化で従来の常識は通用しない

 今日、問題提起された中小企業の海外進出、海外技術流出、進出に関するノウハウの不足や、あるいは日本における起業、これら全部、均一体系がデジタル体系に転換しているので、従来の常識が通用しなくなっている。技術流出、デジタル体系でも途上国に行ってしまう。中小企業の場合は、技術体系がモジュール化している、モジュールのところへスポット入るなど、日本の中小企業の海外進出が考えられる。IT産業分野における起業は、日本では非常に難しいということだが、克服していかなければ前途はない。

◇ 塚本桓世氏  沢山の大学がMOTを発展させて欲しい

 イノベーション研究科ということで、MOT大学院をやっている。夜と土曜日に社会人の方に来て頂いて、非常に優秀な、熱心な方が多い。国がもっとサポートして、沢山の大学がMOTを発展させてもらわなければいけない。企業の方で、意欲ある人が行き易いようにして頂かなければいけない。私ども大学を経営する立場としては、意欲のある方が、勉強に来ようという時に来にくいという雰囲気がまだある。そういうところを考えて頂きたい。

◇ 西河洋一氏  起業家を育成する教育が必要

 岡村会頭の話の中で「起業する人が目標を立てたが出てこない」と言われたが、私はこの件に関して、恐らく今の教育制度が、そういう新規事業に対して積極的にチャレンジしていくという人材育成のコントロールをしてきていないのが現状である。恐らく、起業するにしても50%以上成功するならやるが、それより低ければやらないと言う人が圧倒的だと思う。失敗を恐れないというマインドを注入するような教育が必要である。

◇ 野依良治氏  “The World is Flat”時代に適応する

 国立大学の人材養成は、国際競争力を全く持ち合わせていない。人材競争に勝てず、各国から優秀な人材を呼び込むことができず、送り出すことも大変難しい。学術論文も、程度が落ちてきており、遂に数では、今世界5位になっている。技術はどうかというと、科学技術は先端計測機器とかに依存しているわけだが、これもライフサイエンスなどでは、83%が外国製のものになっている。“The World is Flat”という時代に適応する社会に変えていかなければ、科学技術創造立国はあり得ない。科学技術に過大な期待をして頂いて結構だが、基盤を作って頂くことに協力賜りたい。

◇ 薬師寺泰蔵氏  国は敗れても地方があれば大丈夫

 地域の科学技術は、岡村会頭がおっしゃったように産官、地方の大学と一緒になって国際的な仕事をしている。私はそれをずっと応援して5年目になるが、非常に良い仕事を海外の先生方とやってきている。日本は、国は敗れても、地方があれば大丈夫、商工会議所のDNAでもあるが、地域性、地域があれば日本は大丈夫、それからあるが、地域性、地域があれば日本は大丈夫、それから国際的になっている。地方の大学が頑張っているので、日本はつぶれない。国は半分以上敗れているが、地方は頑張っていると思う。

◇ 小島明氏  日本はアンチビジネスの空気

 フラットな世界で、世界中が中国も含めて産業振興の大競争をやっている。その中で日本が、全くアンチビジネスの空気を持ってしまっている。外車の輸入の中でトップは、日産である。タイで、ほとんど現地の部品を使って製造をして入ってくる。アンチビジネスの空気が非常に深刻であるとすれば、企業も行動を起こさなければいけない。先ほど420万の企業があるという話があったが、企業はトップを含めて2,3通、政治家に、政府に手紙を出す。そしたら十分世論を作る力になる。メッセージを出し続けることが大事だ。

◇ 荒井寿光氏  大学が国際化し、国際競争力を高める

 中小企業にとって大学は非常に大事な関係で、卒業生もいっぱい入るようになってきた。その中で国際化の波で大学が国際化し、国際競争力を高めるのは、大事だと思う。その時に、入試の時期を変える話があるが、大学院から第1ステージをやって、教員が国際化して、国際研究協力をし、国際的な産学連携をして、それを受けた上で、学部の入学試験の時期を変えてもらった方が、中小企業にとってもメリットが大きい。

◇ 伊賀健一氏  国内で中小企業を維持、雇用を守る

 中小企業は海外移転ということと、国内をどうするかという矛盾したところがある。身内が地方で中小企業を経営しており、苦慮しているのを実感している。国内での中小企業の維持、雇用を守る政策が必要で、皆海外へ出て行ってしまうと、地域の力が落ちてくる。根幹に関わる。何とかしなければいけない。それからベンチャーを約3社から4社、毎年作って、大学が認定しているが、これを応援する仕組みがない。産学協力は、大きな予算で動くが、育てる仕組みがない。何とか工夫をして応援をしたい。

◇ 石田寛人氏  原発の再稼働は避けて通れない

 成長戦略にとってエネルギー確保は極めて大事だ。ポイントは、長期的な視点と、短期的な視点をきちんと分けて考えることではないか。グリーン・イノベーションや、新再生エネルギーも大事だ。原子力発電所の再稼働は、避けては通れない話だ。原子力は使い方によっては大きな潜在力を持っているので、それと長く付き合える人類でありたい。大型炉、トリウム炉、それぞれ研究していくことは非常に大事だと思う。それぞれデメリットもあるが、軽水炉だけの原子力発電所ではないということも大事である。

◇ 河村有弘氏   ITの問題をもう一度見直して欲しい

 今こそITを成長戦略の根幹に据えて欲しい。これはもちろん復興の問題にも、中小企業の問題にも、これからの様々な問題にもあるが、どうも今、政権与党はITの問題に関心がないのではないかと心配で仕方がない。もちろん漁業も農業もエネルギーも大事だが、これが本当の成長のエンジンンになるには、色々なハードル、既得権の問題とか、政治的に難しい問題がある。緊急の課題として、ITの問題をもう一度見直して欲しい。

◇ 森裕子氏  化学廃棄物などの環境リスクの削減

 世の中がエネルギー問題とか、炭酸ガス問題、生態系の危機など言われる中で、化学系廃棄物の仕事をしている。昨年は世界化学年、グリーン・エコノミーの中での化学廃棄物などの環境リスクの削減なども謳われている。今の課題は、社会との連携の中で、現場を構造化していく、技術開発の共同研究の仕組みを作っていく、それから産業廃棄物はじめトレーサビリティの立場から言うと、同じ舞台で語り合って問題解決をしていく土俵ができると良いと思う。

◇ 前田一郎氏(榊原定征東レ社長の代理)
脱原発というか、減・原発依存が正しい

 経済再生に向けて重要なのが、エネルギー問題である。特に福島は、原発の問題、放射能の問題が続いてクリティカルだが、10月以降の議論が、最初は原発から3、4カ月後からの諮問委員会の立ち上げということで、感情論に流されていた。全くニュートラルな、製造業、産業の視点から、冷静な議論をお願いしたいという立場で参加している。脱原発というか、「減・原発依存」という言い方が正しいと思う。足元の問題を考えれば、産業、製造業だけに影響が大きいのみならず、生活者にも停電は昨夏も大きな負荷をかけた。

◇ 小平和一朗氏  内なるグローバル化が日本の課題

 グローバル化によって日本の企業が海外に出るだけでは、日本の国力は低下する。内なるグローバル化が日本の21世紀の課題で、日本の国内をグローバル化する取り組みが必要だ。グローバル化を制約していることを取り除いて頂きたい。
 例えば、産業界では社員の海外比率を、大学では先生や学生たちの海外比率を高めるなどをし、世界の優秀な人材と富を日本に呼び込む政策に取り組む。少子化への対応でもある。世界の人が日本を目指す、世界の誰もがこの国に住みたくなるような日本作りが求められる。

◇ 木村節氏  畑村先生の『原子力事故報告』 に感銘

 私は、中小企業というのは日本経済、あるいは日本システムの足腰であって、足腰が弱ったら、もう日本は成り立たないと思っている。最近非常に感銘を受けたのは、畑村先生の書かれた『原子力事故報告』である。これに対しては、推進派、反推進派、色々と意見が分かれているようだが、学ばなくてはいけない。畑村先生が事故現場へ行って書かれた報告である。あの報告書を、原子力発電を日本の経済国家システムや自分の立場に置き換えて読むと、非常に参考になることが多い。

◇ 有馬会長 私もあれは非常によく書けていると思う。

◇ 安西祐一郎  中小企業をリードする人材の育成

 昭和40年代の初め大学進学率は約15%、今は50数%。18歳人口の数に換算すると、大体40万人近くにのぼる。昭和40年代の初めは、高校を出て社会で活躍をするようになっていたのが、今は大学に行っている。その40万人のほとんどは、経営の大変な私立大学に行く。私立大学を出た若い人たちが中小企業に主に行く。その教育をどうするのかは、日本の非常に大きな課題である。サービス産業が増えてきているのは事実であり、それに対応する人材を、特に中小企業をリードしていく人材を、40万人分のところでどう育てるのかが、日本の大学の現実の課題となっている。

◇ 國井秀子氏  女性が活躍すればGDPが16%上がる

 中小企業、イノベーションのキーワードに対して、ITの利活用と、女性の活躍推進が極めて大事になっている。先進国でITの利活用も女性活躍水準も最下位であり、その改革をスピーディにやっていくかがポイントになる。女性の活躍は国連からも指摘されている。「女性が活躍すれば、GDPが16%上がる」と、先日ヒラリー・クリントン米国務長官がAPECでスピーチした中にもあるが、その現実をもう少し啓発していく重要性と、1986年の男女雇用機会均等法以来、色々と改善はされているが、積極的な是正措置、ポジティブ・アクションを推進していく必要がある。

◇ 相磯秀夫氏  ベンチャー活用のために大企業も勉強

 アントレプレナー専攻を大学に作ったが、学生に人気があり、活発である。社会に関連する問題を、解決するために科学技術が非常に重要だという立場でやっているが、技術だけではなく、色々な諸学問を横断的に捉えないと解決ができない。そういう理解が大学にない。その点で「諸学問横断的な領域」を大切にして頂きたい。有能なベンチャーを活用するために、大企業も勉強して欲しいこともある。討論会へ出ると、意外と優秀なベンチャーの方々が、大企業に対して不満を持っている。何かの機会に検討して頂きたい。

◇ 有馬会長  国際戦略上、英語教育は重要

 私はシンガポールの前後の様子を見ていて、小学校から英語教育をやるべきだと思う。30年ほど前にシンガポールに初めて行った時に、市民の英語力は非常に弱く、マスコミの人ですら弱かった。それが現在は、すべての人が英語を話す。英語になり過ぎたほどになっており、ここまでやる必要はないが、日本でも「小学校から英語を教えるべきだ」と、20年前から様々なところで言ってきたが、反対があって、やっと今年くらいから「小学校でも英語をやろうか」という話が出ている。あれを徹底的にやるべきである。日本人は、やればやれる。そうすれば、国際戦略の上でも役に立つだろうと思う。

職業教育に力を入れるべき

 もう一つは、これも15年ほど前だが、高等学校の職業教育を抜本的に良くせよと、当時の文部省でやったが、これもなかなか成功しなかった。先ほど安西先生も言っておられたが、問題点は、高等学校、すなわち職業教育をやっていた高等学校、今は専門教育をやっている学校が非常に弱くなっている。20年ほど前までは、工業高校、今の高等工業高校が頑張っていたが、工業高校とか商業高校にほとんど学生が行かなくなった。これを徹底的に復活させるか、それとも大学で肩代わりをきちんとするということをやるか、それをやらないと日本の中小企業の足腰になる技術者が養成されないと思っている。岡村先生、ご感想を賜れば幸いである。

◇ 岡村会頭  地域経済を活性化させ、結節点の役目

 大変貴重なご意見を賜って、政府がやるべきこと、我々が中小企業のまとめ役として何をしなければいけないかということと、皆さんそれぞれの立場でお話を頂き、また国際化を含めて教育体系をどう作っていかなければいけないかということで、お話を受け賜わった。大変感銘を受けた。
 私共も地域経済をどう活性化させるかということが、第一のポイントだと思っており、何人かの方からご指摘頂いたが、地方の一つの結節点としての役目をしっかり果たさなければならない事を再確認した。
 全国に商工会議所の数が514あり、市と名の付くところにはほとんどある。従ってそこが行政と企業と一体となって地域のモデルをどう考えるかということをしなければいけない。今回の震災でも、苦境に立てば立つほど会議所の会頭が頑張っているという姿に大変感銘を受けた。奥様が被災されて行方不明にもかかわらず、現地で復旧活動に懸命に尽力している会頭もいた。また職員も、明かりのついていない、電気の来ていない事務所で毎日、中小企業の相談に乗っているという光景を何回か見て、まだまだ底力は地域に存在していると感じた。
 海外進出の問題でも色々話を頂いた。1つは海外進出に対する政府の支援をもっと要求しなければいけないということと、技術の流出に、我々としてどう対応していくかということ、この辺はMOTの専門の方々の力をもっとお借りしなければいけないと思う。

コアの部分を日本に置き、組み立てを海外でやる

 蛇足だが、創業・起業100万社ということが、政府のイノベーション戦略として打ち出された。統計によると、創業が1社あると、4人の雇用が生まれるという。廃業もあるので丸々とは言えないが、創業100万社ということは、400万人の雇用を生み出したことになる。また、海外進出にあたっては、コア技術を出すことは、流出の危険があり、コアの部分を日本に置いて、開発設計を国内で行って、組み立てを海外でやるということにすれば、一時の採用人口は減るが、数年たてば必ずその企業が大きくなり、雇用が増大したという例もある。
 MOTの進展を促すための大学の国際化という問題については、大変私も興味深く話を聞かせて頂いた。教育の問題を含めて、国際化された学問、そしてその技術の検証を可能にする技術経営というものが非常に大事であるということが改めて痛切に感じられた。
 ぜひ今後ともMOTの活用が、地域中小企業の発展のためのベースになると、改めて確認させて頂いたので、お力を貸して頂くようお願い申し上げたい。

◇ 有馬会長

 それでは、専務理事の橋田さんに本日のまとめと今後の予定、その他についてお願いします。
 岡村会頭、大変お忙しいところをありがとうございました。皆さん、長い間ありがとうございました。

◇ 橋田忠明専務理事  経済団体との交流が重要になる

 時間がないので、私は意見をさし控え、今後の政策首脳懇談会の運営方針を述べたい。
 今日の岡村会頭のご講演が、経済3団体トップとの政策首脳懇談会の最初であり、この後、日本経団連、経済同友会など、逐次、経済団体首脳との懇談も、これまでの大臣との懇談に加えて進めていきたい。今日お話を伺って、非常に有意義であり、商工会議所が新しい時代のニーズに即応して政策への提言力を非常に強化されてきておられるという印象を受けた。これからも経済団体との交流が一段と重要になっていると思うので、よろしくお願い申し上げたい。

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「国造りの3要素をしっかりと打ち出して進める」と話す柘植氏(右)、左は河村氏。

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「中小企業は海外出進のノウハウが不足」と話す小林氏(中央)。岡村会頭(左)、白井氏(右)。

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「日本の可能性について若い人達にもっと考えてもらう場面を作れないか」と語る白井氏。

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「復興現場と日本全体のモノづくり現場を直接結ぶ復興問題解決センターを作るべきだ」と語る藤本氏(右)。左は秋元氏

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「IT産業分野の起業、克服できなければ前途は無い」と話す児玉氏(右)。左は川村氏の代理の唐澤氏。

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「失敗を恐れないというマインドを注入する教育が必要」と話す西河氏(左)、右は木村氏。

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「国立大学の人材養成は、国際競争力を全く持ち合わせていない」と話す野依氏(左から2番目)、左端は安西氏。有馬会長(右)、相磯氏(右から2番目)。

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「世界は大競争をしている」と話す小島氏(中央)、左は薬師寺氏。荒井氏(右)。

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「エネルギー確保は、長期的な視点と、短期的な視点をきちんと分けて考える」と話す石田氏(右)、左は伊賀氏。

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「社会との連携の中で現場を構造化していく、技術開発の共同研究の仕組みを作っていく」が課題と話す森氏。

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「サービス産業が増えてきている。それに対応する人材を育成」と話す安西氏。國井氏(左)、有馬会長(右中)、岡村会頭(右端)。

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まとめの挨拶で「技術経営の重要さを改めて痛感した」と岡村会頭(右)が話す。有馬会長(左)が岡村会頭にお礼。

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「経済団体首脳との懇談も、逐次、大臣との懇談に加えて進めていきたい」と挨拶する橋田専務理事。

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