第1回 知的財産委員会(平成21年7月3日)(議事録〔PDF〕)
7月3日、「知的財産委員会」(委員長・荒井寿光東京中小企業投資育成社長)の第1回会合を開催した。東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科知的財産戦略専攻の石田正泰教授を講師として、「技術経営戦略と経営者から見た知財とは何か」(要点メモ〔PDF〕 )とのテーマで詳細な説明を聞き、意見を交換した。
荒井委員長の提案により、政府審議会、企業、大学など知財問題について広範囲の経験と実績のある石田委員が「技術経営戦略と経営者から見た知財とは何か」というテーマでまとめた「要点メモ」の詳しい説明と、それぞれの項目に基づく検討を行った。
その結果、「知財」が練り込まれた技術経営を全国に広げるため、最初に形を作るより、知財問題の最高レベルの専門家から最新の話題を聞いて、お互いに意見交換しつつ、輪を広げながら、<1>セミナーやシンポジウム開催、<2>経営者への啓発・普及、<3>新聞、雑誌等での掲載、<4>特許庁など政策当局への要望など、世の中に問うていくことになった。
企業にとっては、社長に勇気を持って忠告、直言できる人材:CIPO (Chief Intellectual Property Officer )が求められており、CIPO輩出を最大目標に、知財問題に取り組んでいくことになった。
(1)技術立国、技術立社における知的財産の位置付けについては、まだ概念論が多い。
(2)企業経営における知財の機能では、価値評価が足りない。
(3)「知的財産ポートフォリオ」を早急に整理し、戦略的な研究を進める必要がある。
(4)「ポートフォリオ」は、オープン・イノベーションより重要である。
(5)オープン・イノベーション下の知的財産戦略では、権利を制限して軽く見るのは不賛成。
(6)知的財産法制の制度設計は特許庁が対外的に研究しているが、先端的な観点から提案する。
「活用」-「保護」-「創造」が結論である。
要点メモの(1)〜(6)に関して日本企業では、ほとんどが未完成。富士通などが、その方向に進んでいる。社長に直言できる人材が必要であり、それぞれの項目を実行できるように指導する必要がある。
企業各組織ごとの知財戦略では、各部門ごとにやる必要がある。
三位一体論は、段階ごとに戦略論を作り直す必要がある。
(1) 「オープン・イノベーション」より「ポートフォリオ」の方が適切。
(2) 「経営の中に、知的財産を練り込む」という考え方が重要。
(3) MOTの方を広くとらえ、知的財産をコアコンピタンスと位置付ける。
(4)MOT問題は、抽象、理念では実効がなく、人財・組織、戦略、行動など具体的に取り組む必要がある。
従来、大学は研究費を取るために、特許権、特許の出願に重点をおき、件数は増えたが、活用は二の次だった。これからは、「活用」を重視する必要がある。
手続き論もベースとしては、重要だが、「経営的センス」が必要になった。特許を取るまでが大変で、それで仕事をしたと思っている。特許庁の審査も、抜本的に変える必要がある。
日本経団連の御手洗会長が日米協会の講演で、「特許の相互保証」を主張していた。経団連会長が、この種の特許問題に触れるのは珍しい。
消費者のメリットを第一義に、国ごとのバリアをなくそうとの考え方だが、企業経営者では、これまで各業界同士の交流があり、(A)生産量や価格などの交渉、(B)安全、環境などの交渉、(C)知財を基に尊重し合う交渉などの変化が予想される。良い発明を、安く提供することは、国際共通の考えだが、国による独立した特許制度がこれを阻んでおり、悪い制度である。オープンイノベーションにより、国際的に共同の成果を得られるようにするべきである。「世界一特許」の目標、考え方の普及が重要。
手続きが複雑なことと、権利者と利用者の立場による利害の相違がある。ここでも、「消費者第一」の考え方を入れて、“逆サイクル”の改良が必要になる。
特許の実績のある企業には、手続き上の便宜を与えるなど、ウエートを付ける考え方も有効である。
小泉政権の知的財産国家戦略では、「知財高裁」の実現が大きい。それまでは、裁判官は国際旅費や、英語翻訳の事業費も認められていなかった。知財の判事の地位、人数なども、貧弱だった。米国では、総裁や裁判所が潤沢な費用を使って、積極的にPRすることが普通のことになっている。
「科学技術に国境がなく、知財に国境あり」では、不自然である。企業の経営を変え、国家の形を変える必要がある。世界の他国の発明が、各国で使えるようにするのが基本でなければならない。
WIPOは150カ国で構成されており、共通の特許認証を条約で実現しようとすると失敗する。技術アライアンスの競争を通じたデファクトというやり方が現実的である。