一般社団法人日本MOT振興協会

ホーム事業内容調査・研究事業知的財産委員会›知的財産委員会報告2009年第5回

知的財産委員会報告

第5回 知的財産委員会(平成22年2月18日)

2月18日、第5回の「知的財産委員会」(委員長・荒井寿光東京中小投資育成社長)を開催した。講師に知的財産戦略ネットワーク(株)の秋元浩社長を迎え、「知財戦略とビジネスモデル」 との演題で詳細に説明を受けた。

■第5回 知的財産委員会での報告

写真

左手前から右に秋元社長、鮫島弁護士、
加藤常務、石田副委員長、荒井委員長、
橋田専務理事

2月18日、講師に秋元浩社長を迎え、荒井委員長、石田副委員長、加藤幹之富士通研究所常務、鮫島正洋弁護士・弁理士、秋元浩知的財産戦略ネットワーク社長、橋田専務理事、小平事務局長が参加して第5回の知的財産委員会を開催した。

近く当委員会として『中間報告』をまとめ内外に発表

荒井寿光委員長が「この協会の我々の知的財産委員会は、当初から『MOTらしく、経営者のためになる知的財産とは何か』を共通のテーマとして、各分野の最高の知財専門家を招いて、最新動向のお話を間いて、お互いの立場から意見を交換し、その講師がその後、委員会に参画して委員会を構成していく方式で進めている」と委員会の運営方針を述べた。「そうした勉強を重ねながら、近く当委員会としての『中間報告』をまとめて、内外に発表したい。また、新聞や雑誌への寄稿、出版、シンポジウムやセミナーの開催、経営者への啓発、特許庁など政策当局に対する要望など、外部社会に訴えていきた.い」と活動の方向を語った。

知的財産戦略とビジネスモデル

写真

「米国と競合できる状態まで到達する には、
15年を要する」と語る秋元社長

その後、直ちにパワーポイントによる秋元社長の「知財戦略とビジネスモデル」をテーマとする講演に入った。講演の内容は、ライフサイエンス分野の現状分析、課題、将来について詳しく触れながら、発足したばかりの新会社「知的財産戦略ネットワーク(株)」の業務内容や経営計画などを説明した。

講演の要点と項目は、以下の通りである。

〔1〕ライフサイエンス分野における現状の分析
(1)世界医薬品市場の現状と分析

課題は、<1>イノベーション25を支える基幹産業の一つとしての役割を果たすためには、1にも2にも研究開発力の強化<2>医療費増のコントロールと高齢化社会のQOL維持改善に如何にして貢献していくか−一画斯的新薬の創出

(2)研究・開発、知的財産、人材育成・確保について

 米国と競合できる状態まで到達するには15年を要する

(3)新薬創出とマージングテクノロジーズ
 新薬創出−−ゲノム創薬、ジェネティック創薬、生物製剤、核酸医療、医工業連携、再生医療

(4)売上高、純利益、研究開発費の推移

 占める研究開発費の割合は、18〜20%

(5)物質特許導入後、日本発の新薬が急増

 「赤ん坊」から「子供」へ、まだ成人になっていない。

(6)世界売上ランクに占める日本オリジンの製品(2006年)

 研究開発費を米国対比が10対1とすれば、研究開発効率は、2倍以上、100品目中16品目(全世界対比1.5倍)

〔2〕ライフサイエンス分野における現状の課題
(1)例えば;RNAi基幹技術とその応用分野について

 RNAiは医療・化学・農林水産業その他のバイオ産業に応用が期待され、現在、その実用化のための基幹技術の開発が盛んに行われている。

(2)例えば、RNAi基幹技術に関する米国ビジネスモデル

 マサチューセッツ大、マックスプランク研、スタンフオード大ほか、当分野のパイオニアである米国大学を頂点として、IPベンチャーを介して、メガファーマを産業化の出口とする強力なプロイノベーション体制を構築している。

(3)論文の枝引用回数から推察される科学的貢献度比較

 RNA研究について、国際出願件数上位5つの大学/研究機関の論文数と枝引用回数を比較し、当該技術分野における科学的貢献度を指標化した。
 マサチューセッツ大、マックスプランク研はRNA分野の先駆的論文を数多く出しており、国際出願件数、論文数、論文枝引用回数それぞれが多い。
 一方、T大学やC大は、国際特許出願、論文数とも多いものの、論文枝引用回数が少なく、それらが得た知見の科学的インパクトは弱い。
 産業として、こんなに論文は要らない‐‐日本の最大の欠点

(4)産業分野における知的財産の違い(イメージ)

(5)米国知財制度に係わる特徴

   ●発明:コンセプト出願−−有用性、実施例不要
   ●発明者の認定:コンセプトの着想(勤勉性、実証は必須ではない)
   ●先発明主義:先発明の立証(実験ノートなど)
   ●仮出願制度:1年以内に本出願、PCT出願
   ●継続出願(CA)&一部継続出願(CIP)の活用
   ●グレースピリオド(1年間)
   ●医療行為、医薬の使用方法:特許可能
   ●訴訟制度:Jury/Bench Trial, Discovery, Deposition

(6)製薬協提言のプロトタイプ(国家プロジェクトとして)

 iPS細.胞知財戦略コンソーシアム体制に関する緊急提言(2008.4.24)
 実用化・産業化へのスピードアップ
 (可及的連やかに設立すべき!)

(7)知財支援プロジェクト

 2008年4月24日、官民対話の場で、オールジャパンの『iPS知財コンソーシアム』を提言
 国家プロジチェクトとしての立ち上げは困難であることが判明して、『知財支援プロジェクト』を製薬協内に設置(2008年11月)
〔意義〕業界の国際的な知識・経験を最大限活用することにより、iPS細胞関連のわが国発の画期的な研究成果の特許保護の推進を支援し、わが国全体のイノベーションにつなげる

(8)製薬協・知財支援プロジェクト

13社が資金拠出

(9)知財支援プロジェクトのまとめ

 iPS細胞関連研究を行っている全国の大学・研究機関への知財支援活動の結果

<1> 大学・研究機関の研究内容は、欧米に劣るものではない。
<2> ほとんどの施設が日本での知財化のみを考えていて、グローバルな、特!こ、米国への知財戦略への意識がかった。
<3> 多くの施設が、プロジェクトが提案したグローバルな知財の考え方に強い興味を示した。
<4> ほぼすべての施設から、プロジェクト終了後のフオローに対して強い要望を受けた。

 そのため、広範な先端医療技術の知財戦略をサポートする支援体制への強い要望を再確認

〔3〕ライフサイエンス分野の知財に関する将来に向けて
(1)IPSN, Inc.の目標

 日本のナショナルインタレストを目的に、大学、ベンチャー等の知財レベルの向上、アジア諸国との連携強化、先端技術分野(医薬・医療関係)の知財の源泉の発掘、価値化、マッチングして、日本の知財をグローバル産業に育て上げる--日本発の『創知産業』の実現

(2)IPSNビジネスの概念

(3)事業対象技術分野と研究機関・企業

対象技術分野 先端医療技術(スーパー特区)、先端ライフサイエンス技術、先端融合技術(医工連携技術等)、先端技術一般
当面の対象研究機関・企業 先端(医療関連)技術分野の研究機関・大学・製薬企業等(製薬協知財支援プロジェクト対象研究機関・大学等)、ライフサイエンス分野の先端(医療)技術開発ベンチャー/投資ファンド:産業革新機構・中小企業投資育成(株)等、ライフサイエンス以外の先端技術分野のベンチャー・企業

(4)IPSNへの外部支援体制

 ●アドバイザリーボード
   <1>日本製薬工業協会(知的財産委員会)
   <2>バイオ インダストリー協会
   <3>日本弁理士会
 ●外部専門家
   <1>国内外の専門家及び有識者
   <2>国内外の(弁護士、特許)事務所等

(5)グローバルネットワーク会員のイメージ

(6)主としてアカデミアに向けた事業

 知財関連ビジネスの総合プロデューサー(コンサルテーション・知財駆け込み寺) 特に、<1>知財価値向上のための資金支援<2>特許のパッケージ化と包括ライセンス

(7)日経新聞朝刊 平成21年10月5日付

(8)アカデミアを中心としたIPSNの貢献

 グローバル知財人材の決定的な不足

(9)包括ライセンス戦略の推進手順

(10)主として企業等に向けた事業

 知財関連ビジネスの総合プロデューサー(インキュベーション・ベンチャー企業の創生)

(11)IPSNの貢献による新たな産業革新モデルの構築

(12)ビジネスプロセスとIPSNの事業内容

(13)IPSNインキュベーション事業

(14)インキュベーション事業の概要

(15)Bio Ventureの成功確率向上に向けたIPSNの貢献

 グローバル戦略知財人材の決定的な不足一一武田薬品の1993年対アストラ社との米・欧・日世界知財係争

(16)オールジャパン体制の知財人材

 研究開発戦略・知財戦略・事業戦略の三位一体を担う人材を育成して確保する。

(17)ライフサイエンス分野における“知財戦略体制の構築”

 知財人材の絶対的不足を補うために、総合的な産業政策支援体制が必須
  ●民間型の“知の結集”と“事業化”へ向けた組織体制の構築
  ●大拠点ブロック単位の産学連携ネットワーク体制の確立
  ●アカデミア・BVのレベルアップ−−自立可能な拠点の拡大

(18)アジアに向けての事業展開

 アジアにおけるネットワークを新たに構築する!
 中国−−世界2位、出願大国、論文引用数の増加

(19)IPSNビジネスの概念との連携

 グローバルネットワークの構築

(20)IPSN活動の社会的意義

 <1>大学、ベンチャーにおける知財価値の増大
 <2>大学、ベンチャーの知財強化による先端技術分野での事業化成ス功確率の増大 
 <3>わが国における知財人材の育成と確保
 <4>グローバル、特にアジアに焦点を当てた、ネットワーク構築に基づく、双方向の技術移転促進
 <5>わが国における“創知産業”の実現と確立(世界で初めて)

講演の後、活発な意見交換が行われた。

加藤:資金調達と株式上場について
秋元:基盤から億単位の出資を仰ぎ、普通株と優先株を発行、ファウンダーズ3人50%、基盤(機構)50%の出資比率にする。機構からの資金供給(融資)は株式会社でないとできない。機構の資金量は、政府が820億円、企業20社が100億超円を出資し、さらに8,000億円の政府保証が付いている」と説明した。
荒井:米国と日本の知財制度の違いの中で、特に“先発明主義”の点に注目すべきで、色々議論はあるが、世界特許のルール(スタンダード)は1本の方が得であり、米国に合わせて、早く勝つようにした方が良い。
加藤:MOTを中心に、皆で盛り立てる意識を育て、日本がひとつになることが重要だ。
日本企業が、MOTと知財を最重視して、日本流で世界に勝つことを目指すべきだ。
石田:米国知財制度の特徴を見ると、現在は、過渡期にある。マーケットカが強く、技術水準力が強いと競争に勝てる。世界のリーダーになるには、技術標準だけでなく、オープン・イノベーションに基づいた、コンソーシアム・システムの構築が重要である。
橋田:鳩山政権の新成長戦略では、知的財産戦略が最も重視されており、今後、具体的にどのような政策が打ち出されるか、注目すべきだ。

〔 以  上 〕

Copyright © 2009 Japan MOT Association. All rights reserved.