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知的財産委員会報告

第4回 知的財産委員会(平成21年12月3日)

12月3日、第4回の「知的財産委員会」(委員長・荒井寿光東京中小投資育成社長)を開催した。講師は鮫島正洋弁護士・弁理士(内田・鮫島法律事務所)で、「企業経営の最重要戦略は知的財産戦略である」との演題で詳細に説明した。

■第4回 知的財産委員会での報告

12月3日、講師に鮫島正洋弁護士・弁理士を迎え、荒井委員長、石田副委員長、加藤幹之富士通研究所常務、橋田専務理事、小平事務局長が参加して第4回の知的財産委員会を開催した。

MOTらしい、経営者のためになる知財とは何か

初めに、荒井寿光委員長から「当協会の知的財産委員会は、『MOTらしい、経営者のためになる知財とは何か』を共通テーマとして、各界最高レベルの専門家を招き、知財問題についての最先端の話をうかがい、お互いに意見交換を進めながら、委員会を編成していくやり方を取っている」と説明した。そして、「そうした勉強を重ねながら、シンポジウムやセミナーの開催、新聞・雑誌等への寄稿、経営者に対する啓発、特許庁など政策当局に対する要望など、広く外部社会に訴えていきたい」と、委員長として運営方針を述べた。

企業経営の最重要戦略は知的財産戦略

鮫島弁護士から「企業経営の最重要戦略は知的財産戦略である−中小企業、成功例」の演題で、委員会用に特別に作成した資料に基づいて、詳細かつ丹念に説明がされた。 その要点は、以下の通りである。

(1)第1部 中小企業向け知財戦略支援とのかかわり

 中小企業知財戦略支援プロジェクト(特許庁)
  <1>2004-2006知財戦略コンサルティングプロセスの確立期
  <2>2007-2008知財戦略コンサルティングプロセスの普及期
  <3>2009-  地城中小企業知財経営基盤定着支援事業
 地城中小企業知的財産戦略支援事業
 中小企業の知財戦略構築支援の手法とプロセスの確立
 地域における知財人材育成事業
 関東経済産業局(分科会)シンポジウム開催(2009.3.14)
 2008年度特許庁事業「エコがポイント!知財戦略コンサルティング〜中小企業経営に役立つ10の視点」(発明協会)に見る金言集
 地城中小企業知財経営基盤定着支援事業(2009−3ヵ年計画)
 〔地方自治体プロジェクト〕知的財産に関わる横浜市の活動

(2)第2部 知財戦略に関する二つの基礎理論

 特許リスクなくビジネスができるだけではなく、中小企業では知財戦略によって利益率がUPする
 (知財基礎理論<1>)必須特許ポートフオリオ論
    投資対象企業が必須特許を保有しているかどうかを評価する
    参入障壁アセスメント
 (知財基礎理論<2>)知財経営モデル
    怖いα欠乏症、β欠乏症

(3)第3部 知財戦略で成功した例

 (株)ニッコー様(釧路)
 中小企業の知財戦略コンサルティングモデル
 2008年度特許庁事業「知財戦略コンサルティング〜中小企業経営に役立つ10の視点」に見る金言集
 中小企業の知財戦略支援手法「知財戦略コンサルティング」とは何か

(4)第4部 知財戦略の次にあるもの〜技術法務の世界
  (弊所におけるベンチャーサポート例)

 知財経営モデルと技術法務
 USLF(内田・鮫島法律事務所)ご紹介
 USLFの顧客層とサービス   

<1> 知財戦略立案(新規ガラス素材ベンチャー) 知財戦略によってオンリーワンを目指していく例
<2> ライセンス交渉/新設バーコード方式ベンチャー 一貫したライセンスコンサルによって技術資産を収益化

講演の後、意見交換を活発に行った。

石田:演題の「企業の最重要戦略は『知財』である」ことを、経営者は分っていない。中小企業だけでなく、大企業の経営者にも分ってほしい。第2に、これからの企業経営者は、目に見えないことを重視しないと、国際競争力は本物にならない。第3は、コンサルティング概念の方が入っていけることが分り、勉強になった。
加藤:鮫島氏は、日本にとって重要な仕事をされている。米国のシリコンバレーでは、イノベーション・エコシステムの重要性が叫ばれ、技術、法律の双方が分かってこそ、ビジネスに生かせるとの認識が普通になっている。さらに、鮫島氏のご指摘は、大企業も同じ問題を抱えている。実は、『知財』を経営や事業に生かしていないし、真の意味の国際競争力がない。
 また、日米両国を比較して、日本では、大企業はすべて自分でやろうとする傾向があり、本当にコンサルティングができる人材が育っていない。富士通では、弁護士報酬についても、独自の料金表に基づいている。
荒井:確かに、大企業にも『知財』の分かる人はいないと思う。第1は、大企業経営者に意識変革をしてもらう必要がある。第2は、米国のイノベーション・エコシステムを考えると、日本では、1990年代に弁護士・弁理士が増加したが、2000年以降、再び“回帰現象”や“ひきこもり現象”が起きている。極端な言い方をすると、「市場がなくなり、キャピタルはダメ、弁護士・弁理士はダメ、大学と地域のTLOもダメ」と、総崩れである。プロフェッショナルは増えたが、離婚とサラ金の他は仕事がない。まさに、危機的な状況である。
鮫島:私が挑戦している「技術法務」の分野は、将来、膨大な市場がある。
加藤:私の研究所では、特許マップ、つまり先行技術調査のテクノロジーマップを作成している。また、日本で「知財プロフェッショナル」が育たない原因は、使う側の認識にあると思う。
荒井:現在、「知財が大事だ」と言う経営者は、全体の中で、米国の6〜7割に対して、日本は2割であり、これを3年後に5割、5年後に8割に持っていくことが、この委員会のミッションだと考えている。


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