第12回 知的財産委員会報告
平成23年5月16日、日本記者クラブにて、第12回の知的財産委員会(委員長:荒井寿光東京中小企業投資育成社長)を開催した。鮫島正洋委員(内田・鮫島法律事務所 弁護士・弁理士)から「横浜市における知的財産戦略の進展と成果について」のテーマで説明がされ、続いて、ゲストの土生哲也弁理士から「知財活動による経営基盤強化を支援する“横浜知財みらい企業支援事業”」のテーマについて説明がされた。
鮫島委員(左)「知財による格付けと事業化を、金融にリンクさせることが
自治体の知財町興しの重要なカギ」と話す。右は、ゲストの土生弁理士。
講演では、鮫島弁護士(横浜市 知財戦略懇話会座長)が「横浜市における知的財産戦略の進展と成果について」のテーマで、資料に沿って、詳しく説明した。
知財と事業競争力は
(1)シェアの向上
(2)投資効率の向上
(3)従業員のモラルアップ
(4)技術力のPR
−−があり、知財戦略を実現するプロセス、横浜市における知財戦略の進展と今後のアジェンダに別して説明した。
平成15年に当時の中田市長が「中小企業振興の中の知財」の観点から「金賞」を設け、市政に取り上げる政策を具体化した。横浜市には、慶応大、東工大など理工系を中心に11大学がある。また、日立、日産、古河など企業研究所も多く、中小ベンチャーも数多く誕生している。平成18年に市10%と残りは大手銀行によるベンチャーラボのITマックスを新設して、市の中小企業のコンサルタントを開始した。平成19年に知財による「横浜価値組企業の評価・認定」制度を開始した。
認定されると、
(1)技術評価
(2)銀行が会ってくれる
(3)資金調達
−−の道が開ける。
市からの低利融資も可能になる。
また、市がPRや、他へのライセンス供与の仲介もしてくれる。本年度から向こう5年間の知財計画が始まった。中小企業技術・経営革新戦略と海外ビジネス展開戦略を両輪に、特許担保融資の実現など新しい政策に取り組む一方、国の政策とも関連付ける。鮫島弁護士によると、「知財による格付けと事業化を、金融にリンクさせることが自治体の知財町興しの今後にとって重要なカギになる」と言っている。
続いて、ゲストの土生哲也弁理士が「知財活動による経営基盤強化を支援する“横浜知財みらい企業支援事業”」のテーマについて説明した。
頭でっかちや、かけ声倒れでは個別企業に知財は定着せず、事業モデルと知財の力を「仕組み」にすることが定着につながる。
知的財産活動を通じて経営基盤を強化し、未来に向けて成長を志向する企業を、「横浜知財みらい企業」として、認定し、支援する。
認定されなかった企業も、状況に応じて支援する。
認定されると
(1)国内出願の費用助成
(2)外国出願の費用助成
(3)知財活用促進助成における限度額、助成率の優遇
(4)金融支援(低利融資、信用保証料助成)
(5)企業PR支援
(6)フォローアップの無料の知的財産コンサルティング事業の1回実施
−−などの特典がある。
この制度はスタートしたばかりだが、土生弁理士は「評価者のスキルと、制度として分かりにくくなりがちなことの2点が課題である」と語っている。
鮫島弁護士と土生弁理士の説明について、「地方公共団体による格付けは問題が出ているかどうか」(石田講師)に対して、鮫島弁護士は「クレームは出ている。そのため、本年度から格付けを止め、通ったか、通らなかったか、点数のみを発表するようにした。評価は、コンサルタントのツールに使えると思う。中小企業を対象にしていると、知財は多様であり、モデル化が必要だ」と答えた。
また、鮫島弁護士は「毎年70社程度が認定される。今年から、1件当たり国内は20万円、外国は150万円の助成を行うことになった。さらに、メディアに出やすくなるメリットもある」と締めくくった。