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米国のビジネス・知財最新情報

【第2回】 インターネットの国際管理(2010.1)

 インターネットは、1969年に米国の国防総省のプロジェクトとして、研究機関や大学のコンピューターを接続しようとしたことが始まりだとされている。その後も長い間一部の専門家だけの間で利用されてきた。1989年にウエブ技術が開発され、90年代になってドメイン名の利用が民間に開放されるようになり、インターネットは急速に浸透した。今振り返って見ると、インターネットのメールや、検索等ができなかった時代がつい10数年前だったとは信じられない気がする。

 一方、インターネットの利用者や用途が拡大する中で、著作権等の知的財産権侵害をはじめとして、セキュリティや不正使用、スパム(迷惑メール)、不健全なコンテンツ等々、社会的問題が急増している。インターネットが金融や流通、公共機関等、社会の重要なインフラを支える時代になり、こうしたインターネットの負の側面をどうやって補っていくかが大きな課題となっている。
 今や人類共通の財産となってしまったインターネットは、一体どうやって管理すべきなのか?インターネットに国境はないから、どうやって国際的にインターネットを守り、発展させていくのか?が、国連の場で議論されている。

国連はインターネットの管理問題を議論する場としてIGFを開催

 90年代にインターネットが国際的にも爆発的に拡大した結果、米国はインターネットのドメイン名やIPアドレスの管理を国際的に行う組織として1998年にICANNを設立した。ICANNは、ITU(国際電気通信連合)等の既存の組織の多くが条約に基づく国際的政府機関であるのと違い、カリフォルニア州の民営の非営利団体として運営されている。

 しかし、ICANNの運営に関して、米国政府が監視権限を残しているとの指摘や、ICANNは、民間組織ではなく(ITU等と同様に)国連の一組織または管理下に置くべきだというような議論が(中国をはじめとした一部の国々に)残っている。
 国連では、こうしたインターネットの管理問題を多くの関係者が議論する場として、IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)を毎年開催してきた。筆者は、2000年からICANNのアジア太平洋地域代表のボードメンバーを務め、その後IGFの国連事務局のアドバイザーとして、これらの議論に参加してきた。IGFが始まって4年目となる2009年は、11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで112カ国から約1,800人を集めて開催された。

クラウドコンピューティングの出現で、知財制度がどう変わる


2009年11月15日~18日まで、IGFエジプト会議が開催された。注目すべき課題として「クラウドコンピューティングのような新しい社会モデルが出現する中で、知財制度がどう変わっていくべきか?」がある。

 IGFエジプト会議では、インターネットの管理を行うべきはICANNか国連かというような政治的な議論よりも、インターネットの負の側面を改善し、発展させていくための国際的取り組みに議論の焦点が移ってきた。
重要と思われる課題に(1)インターネットやデジタル技術の進歩により、例えばクラウドコンピューティングのような新しい社会モデルが出現する中で、知財制度がどう変わっていくべきか? (2)新しい技術やビジネスモデルを取り入れながら、 日本企業が世界の議論をリードしていくことが必要・・・がある。
 具体的には、(a)クラウド時代の(特に一般の)利用者 間の責任関係の問題、(b)(知的財産権の保護は 確保しながら、同時に)情報をより自由に活用できる ための仕組み作り、が重要だと思う。
 IGFエジプトの会議では、全部で90もの分科会が開催され、それぞれの分野で 違った議論をしている。

IGFエジプト会議では、インターネットの管理を行うべきはICANNか国連かというような政治的な議論よりも、インターネットの負の側面を改善し、発展させていくための国際的取り組みに議論の焦点が移ってきた。
 重要と思われる課題に(1)インターネットやデジタル技術の進歩により、例えば クラウドコンピューティングのような新しい社会モデルが出現する中で、知財制度がどう変わっていくべきか? (2)新しい技術やビジネスモデルを取り入れながら、 日本企業が世界の議論をリードしていくことが必要・・・がある。
 具体的には、(a)クラウド時代の(特に一般の)利用者 間の責任関係の問題、(b)(知的財産権の保護は 確保しながら、同時に)情報をより自由に活用できる ための仕組み作り、が重要だと思う。
IGFエジプトの会議では、全部で90もの分科会が開催され、それぞれの分野で 違った議論をしている。従って、それらをすべて取り上げることは難しいので、その一部を紹介した。国連IGFエジプト会議のより詳細な報告が、NIKKEY NET・ビジネス・ネット時評に掲載されている。
 (http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITs2000011122009

残念なことに重要な国際会議に日本人の参加が少ない

 知的財産権の分野でも、違法な侵害行為を取り締まることが叫ばれる一方、過度な規制を行うことにより、自由な知識、情報の流通が阻害されることの弊害が指摘されている。残念なことは、世界中の専門家が集まるこうした重要な会議に、日本からの参加者や発言者が極めて少ないことだ。欧米からは政府の幹部や民間人、NPO団体を含め多くの参加者があったのに比べ、日本からの参加者は例年少数である。
 人類の将来は、知識社会、情報社会に向かうことが明確であり、現在のインターネットやその後発展するネットワークを通じて知識や情報を得、発信することは、国家的にも極めて重要なことである。日本がこうした国際的な将来の枠組み作りに、積極的に参加することを強く希望する。


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