【第1回】 知財をめぐる激しい動き
2011年、知財をめぐり新しい動きが起きている。
4月から米アップルと韓国サムスンの間で企業の存亡をかけた知財戦争が行われている。
両社は、スマートフォンやタブレット端末をめぐり、米韓日独仏伊蘭で特許やデザインをめぐり、30件以上の訴訟合戦を展開している。8月アップルの訴えに基づき、サムスンのタブレット端末について販売一時差止めの仮処分がドイツで出された。10月アップルがiPhone4Sの販売を発表。翌日、サムスンは特許侵害を理由にiPhone4Sの販売禁止を仏伊の裁判所に訴えると発表。今や知財訴訟は世界規模で行われ、予断を許さない。
6月、アップル、マイクロソフト、ソニーなどの6社連合が、経営破たんした通信機器大手ノーテル・ワークス(加)が保有する6,000件を超える特許ポートフォリオを約45億ドル(約3,600億円)で落札。特許が入札で取り引きされること、特許の平均価格が6,000万円と高額なことが注目された。
6月、中国の国有企業の南車集団が米国で高速鉄道車両「CRH380A」の特許を出願すると報道された。中国の高速鉄道には日本の新幹線技術が提供されており、日本の特許技術を模倣したものではないかと議論されており、日本企業は技術輸出の際、特許管理を強化すべきであろう。
8月、グーグルが米通信機器大手モトローラ・モビリティーを125億ドル(約1兆円)で買収し、1万7千件の特許を取得した。その金額の大きさに驚き、IT分野での特許の重要性を再認識させられた。
9月16日、米特許法改正法案にオバマ大統領が署名し、ついに先願主義への移行を決定。日本をはじめとする外国からの長年の要望が実現。これにより、世界の特許制度のフラット化が進み、世界特許実現に向けて大きな障害の一つが取り除かれた。
10月1日、ACTA(ニセモノ防止条約)の署名式が東京で開かれ、日、米、加、豪、NZ、韓、シンガポール、モロッコの8ヶ国が参加。近いうちに欧州も署名の見込みだ。ニセモノ対策に世界各国が協力して取り組む姿勢を示すものであり、知財システム国際化の大きなステップといえる。
この条約は日本が2005年のグレンイーグルG7首脳会議で提唱したものであり、国際条約を提唱しリードした初めてのケースと言われている。
(注記) 加:カナダ、豪:オーストラリア、NZ: ニュージーランド(New Zealand)、韓:韓国