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コラム:知財革命のすすめ   −知財の国際競争を勝ち抜く−

【第2回】 知財革命が始まった

● 知識社会が到来

(1)人類の歴史は工業社会から知識社会に移行

 1760年代に英国で蒸気機関、織機などが発明されて、産業革命が起こり、農業を中心とした社会から、機械で大量の工業製品を生産する工業社会に移行した。19世紀後半には、米国でエジソンを始めとする発明家が電気、鉄鋼、化学、自動車などを発明し、工業社会を完成した。第2次大戦後の復興を成し遂げた日本は、1980年代には世界一の工業国家になった。
 1990年代からは、インターネット、パソコン、携帯電話などが急速に普及し、IT革命が進行している。これにグローバリゼーション、共産主義の崩壊が加わり、世界経済システムは大きく変化している。
 工業製品が主役の工業社会から、知識が決定的に重要な役割を果たす知識社会に移行中である。

(2)知識社会ではビジネスモデルが大きく変わる

 従来、工業製品はスタンドアローン商品として独立して単独で使われるものが多かったが、今やテレビが情報端末に変わるように、ネットワーク型商品として他の商品とつながって使われるものが増えている。ソニーのウォークマンはスタンドアローン商品であり、インターネットで音楽配信を行うアップルのiPod, iPhone、iPadは、ネットワーク型商品でビジネスの仕方が全く違う。
 やがて電気自動車が普及し、電力需給を自律的に調整するスマートグリッド(デジタル機器による通信や演算能力を使う新しい電力網)と組み合わされるであろう。そこでは、自動車もネットワーク型商品となる。
 自分でコンピュータやソフトウエアを持たず、ネットワークを介して利用するクラウド・コンピューティングになれば、さらにビジネスモデルは大きく変わる。
 知識社会は、知の大競争時代。業種、国境、価値観を超えた競争が行われる。

● 知財の革命的な変化

(1)工業社会においては、知財は科学技術開発と産業の発展に大きく貢献

 そこでは特許は、自国産業の保護を目的としており、特許庁、裁判所、 税関・警察など国家権力の行使という側面が大きい。従って国ごとに独立している。保護対象は、製品特許や製法特許が中心。例外として薬などの物質特許やソフトウエア特許も、近年認められるようになった

(2)知識社会においては、知財は決定的に重要な役割を果たす

 特許も、著作権も、保護対象の中心が有体物から無体物に変わり、その役割が変化している。インターネットは、国境をなくしているので、知財制度は内向きな国内制度ではなく、国際活動を円滑にするためのソフトな国際インフラに格上げされている。
 工業社会では、特許を取って自社で独占して生産することの意義が大きかったが、知識社会ではユーザーを増やすことが大事になり、独占と公開のバランスが変化する。知財を保護しながら、同時に情報を自由に活用できるための知財制度が必要になる。
 知財侵害の定義の見直し、準拠法、裁判管轄、執行などの国際司法の問題の解決が急務だ。


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