第6回 「女性の活躍舞台づくり」委員会報告
平成24年1月13日、學士會館3F
301号室(東京・千代田区)にて開催した。最初に橋田専務理事から、2月9日開催予定の第1回「女性の活躍舞台づくり」シンポジウム、統一テーマ「変革の加速とポジティブ・アクション」の進捗状況が報告された。その後、シンポジウムの到達目標、運営の仕方などの事前の意見調整を委員相互間で行った。
続いて、昭和女子大学学長の坂東眞理子氏から、「女性の能力を生かす社会へ」とのテーマで講演があった。
坂東眞理子氏から「女性の能力を生かす社会へ −未活用資源を生かすには−」と題する講演を聞いて、委員相互間での意見交換を行った。講演の概要及び出された主な意見は、以下の通りである。
ポジティブ・アクションで成果
34年間の公務員生活の中で、期間は長くはないが1975年の国際婦人年の時に、当時の総理府に婦人問題企画推進本部の事務局である「婦人問題担当室」が設置されて配属され、第1回の婦人白書を書いた。1993年、労働省の担当だった婦人問題担当室長に初めて総理府から任命され、名称を「男女共同参画室」に変えた。日本は分かりにくいが、英文訳は、”Policy office for gender equality”である。
橋本行革の後「男女共同参画局」になり、初代の局長を務めた。その時、「2020年までに、あらゆる分野の指導的な地位の30%以上を女性にしよう」という本部決定をした。反対も多かったが、17年先である、本気で15年ほどかけて採用していけば、それくらいは行くと言っていたが、もはや2012年になって、あと8年しか残っていない。
ポジティブ・アクションに取り組み、審議会の女性の委員を、当時2.4%であったものが、10年間で10%という目標を出した。当時無理だと随分反対があったが、政府が任命するポストで、人口の半分を占める女性を任命しないのはおかしいと主張した。10%は達成できなかったが、10年間で9%になった。最近は、30%をクリアして33%になっている。「どちらかの性が40%を下回らない、60%を上回らない」という目標値を達成する勢いである。
国家公務員の採用、今は25%位採用されている。試験に通れば面接で落とされることは少なくなった。国が責任を持ってやれる分野は、30%に近づいている。
(1)「差別なんかしていません」という男性に対して、啓発活動が必要だと考えている。理解のある変革型の経営者を育成していかないといけない。
(2)女性側の課題として、女性を見ると、分野によっては甘やかされている。これをどううまく変革していくかが課題である。
(3)家庭の中での変革も、女性は意識する必要がある。外と家庭の中では異なる。家庭に対する教育も必要だと考える。意識改革は企業だけでは出来ない。
(4)会社と家庭で考えが切り替わる。会社の中では平等でも、家庭に戻ったら違うと考えている。10年待ってくれと言われているが、それでは間に合わない。家庭における平等議論もしないといけない。
(5)変革の仕方に、北欧式と米国式がある。北欧は、社会制度を取るとか、クオーター制を取るとかで、きっちりやっていく。米国は遅れているが、経済インフラがきちんとできていて、働きたい人には、リーズナブルな価格で対応できる。日本と比較すると、進んでいる。両者とも、メリット、デメリットがあるが、考えていかなければならない課題である。
(1)「女性を優先して採用する」と書いたら、労働基準監督署から不適切と指導されたという話がある。労働基準監督署が、ポジティブ・アクションを理解していない。彼らがむしろ指導すべきであると考えている。
(2)男性の管理職から、女性を優遇するとか、女性を集めたりすると、女性から「差別だ」と言われるという。特別扱いされるのは、嫌だという気持ちが女性の側にある
(3)ポジティブ・アクションは、是正するための暫定処置と理解して欲しい。女性の管理職が少ないので、女性の管理職を増やそうという研修では、データで現状を説明し、ポジティブ・アクションをきちんと説明しなければならない。
(4)例えば大学で多いのだが、女性の研究者を増やそうとすると、女性から反対される。
(5)クォーター制を日本では設けることが出来ていない。早急に変革するのであればクォーター制を導入すべきだと考えている。
(1)経営のトップ層の中から、変革をしてくれる人を見つける必要がある。成功事例と他との比較を示すことが必要である。遅れてはまずいと経営者が思うように意識改革をしたい。
(2)他との比較では、データで示すことが必要である。現在の経営者の多くは、女性がどれほど辞めているか、女性の管理職が何%か、育児休暇を取った人が辞めているか継続しているかのデータをつかんでいない。
(3)MOTとして、表彰制度を作ってもよい。変革のために貢献した人をMOTが表彰する。カタリストというアメリカのNPOが「カタリスト・アワード」と言うのがある。80年代から表彰をしている。第1回の受賞企業は、エイボンが表彰された。
(4)東洋経済のダイバーシティ経営表彰は、ダイバーシティの分野の中に女性管理職がある。来年あたりから、グローバル人材が入ってくる。女性だけでなく、外国人を使えるようになる必要があるという議論があるが、異なる価値観をどう受け入れるかという問題がある。
(5)日本は、グローバルでも遅れているが、それ以上に女性差別という観点で非常に遅れている。
それにフォーカスする時に、ジェンダーと言わないと、非常にあいまいになる。少子高齢化の対応策では、グローバルというより、まず女性の活躍推進が重要である。
グローバルというと曖昧になるので、経営者には受け入れやすいが、グローバルでは、女性の活躍が見えなくなる。
(6)北欧や米国では、差別として取って変革してきた。どういうトーンでやるべきかが大切である。
経済の観点では、本質に迫らない。切り込まないと改革がスローになる。
(7)定性的で無く、定量的に把握しておく必要がある。入社時に女性が何人いて、入社後何人残っているというデータが必要になる。MOT独自でデータを取るのは難しいと思われるので、しかるべきところに定点観測をして欲しいとかの提言も重要だと思う。
(8)入社時は女性が優秀なのに、40代になると能力が落ちてくるのはなぜか。調査する必要がある。女性の能力が落ちる。原因を知りたい。
(9)政治も動かす必要がある。
(10)理系の人がリーダーシップをとる。MOTの企業、メンバーは引っ張っていきやすい。日本は製造業で成立っている国だから、MOTが日本を引っ張るミッションがある。
(11)製造業もサービスにシフトしている。トータルシステムとして、研究をしなければならない。人材の多様性が必要になっている。
講演を行った坂東昭和女子大学長(左)と
ゲストの牛尾真奈美明治大学教授(右)との間で意見交換。
資格試験の分野で女性の進出は目覚ましい
学校教育、資格試験の分野で、女性は進出している。薬剤師の国家試験では、3分の2が女性である。医師は、18%であるが、医学部に入学する学生の3分の1が女性である。私立の大学は授業料が高いこともあって2割程度である。国の審議会委員が33.8%、国家公務員(事務系)が25.7%、新しく任官する裁判官、検察官では3割を超えている。試験があるところの女性の進出は進んでいる。
国会議員よりも、地方の議員の方が低い。地方議員で東京都の区議会議員は高いが、町村レベルでは、数%になって低い。